あなたは、サイクルトレインを知っていますか。
サイクルトレインでは、むき出しの自転車をそのまま乗せることができます。
通常、電車へ自転車を持ち込む場合は、自転車を分解して輪行袋へ入れなければならなく、その手間が省けるのは非常に便利。
欧米では、自転車を電車へむき出しのまま乗り入れするのは当たり前ですが、日本でこのようなことが出来る電車は限られており、まだまだ発展途上なのが現実です。
島根県出雲市と松江市を結ぶ「一畑電車(いちばたでんしゃ)」は、その珍しいサイクルトレインの一つとして知られ、地元住民の足として日夜運行している有難い電車ですね。
本記事では、サイクルトレイン「一畑電車」について紹介します。
サイクルトレイン「一畑電車」とは
島根県東部には、周囲約45kmもある宍道湖が広がっています。
この湖は、全国で7番目の大きさを誇り、南北両端には電車が通過していますね。
南側には山陰本線が通過し、北側にはローカル鉄道である一畑電鉄が走っているのです。
一畑電鉄が運営する一畑電車は、サイクルトレインとして毎日終日自転車をそのまま持ち込める鉄道であり、地元住民に親しまれているという。
また、「バタデン」の愛称で呼ばれていますよ。
お気に入りの自転車と一緒に電車旅へ出かけてみませんか。
一畑電車のコースと料金
一畑電車のコース
こちらが一畑電車の路線図。
川跡駅で分岐しているため、出雲大社前駅から松江しんじ湖温泉駅までは21駅を通過し、電鉄出雲市駅から松江しんじ湖温泉駅までは22駅を通過しますね。
気になる駅で途中下車して、宍道湖の周辺をサイクリングするのも楽しそうです。
一畑電車の料金
切符はこちらの販売機から購入できます。
現金だけでなく、Suica(スイカ)やICOCA(イコカ)など交通系ICカードも使えるので、普段あまり現金を持ち歩かない方も大丈夫。
ただし、交通系ICカードは切符の購入のみに使え、ICカード乗車券には対応していません。
こちらは、出雲大社前駅から乗車した場合の料金です。(普通運賃は2019年10月1日改定)
始発の出雲大社前駅から終点「松江しんじ湖温泉駅」までは820円になりますね。
尚、自転車を持ち込む際は、電車の乗車券以外に自転車持込券(320円/台)も購入しましょう。
すると、切符は乗車券と自転車の持ち込み券の2枚になります。
合計1,140円で自転車を持ち込んで、出雲大社前駅と松江しんじ湖温泉駅へ移動できますよ。
- 大人料金は、12歳以上が対象。しかし、中学生以上とし、12歳でも小学生の場合は子供運賃扱い。
- 6歳以上~12歳未満(6歳でも未就学児は幼児扱い)は小人料金となり、大人料金の半額(10円未満の端数は切り上げ)。
- 1歳未満は幼児扱いとなり、「大人」または「小人」1名に同伴された幼児は、2名まで無料。尚、3名からは小人運賃が必要です。
レトロでモダンな駅舎(出雲大社前駅)
出雲大社前駅は、縁結びのパワースポットとしてその名を全国に知られている出雲大社の最寄り駅。
この駅から北上すれば、約10分も歩かない内に出雲大社へ到着します。
駅舎の外観は、レトロでモダン風であり大変珍しい。
また、まん丸した可愛らしい屋根が特徴で、屋根の中央と扉のステンドグラスが目を引きますね。
普段見かけることが少ない、薄緑色の瓦が日の光を浴びて輝いて見えるのもGood。
出雲大社の大鳥居(一の鳥居)から正門まで続く神門通りに佇み、周囲の景観の中で一際目立つ存在です。
1996年には、国の登録有形文化財となり、2009年には近代化産業遺産に認定されました。
駅舎の中へ入れば、ステンドグラスの色とりどりの美しさが印象的で記憶に残ります。
中はそれほど広くはないですが、待合室としては十分な広さがありました。
一畑電車の運行は、1時間に1~2本しかないので、1本乗り過ごすと大変です。
しかし、神門通りには沢山の食事処や土産屋があるので、時間を持て余すことはないかな。
改札口を通り抜けると、サイクルスタンドが設置されており、電車が出発するまで自転車を掛けておくと良いでしょう。
日本最古の歴史書「古事記」に記された出雲大社の最寄り駅として、和風で荘厳な駅舎を思い浮かべる方も多いと思いますが、意外にも洋風な駅舎で驚くかも。
可愛らしい駅舎の外観は好ましく、八百万の神様が集まる土地の駅舎として、その存在を示しています。
【周辺の見どころ】
出雲大社前駅の周辺には、有名な出雲大社や稲佐の浜がありますね。下記記事では、これらの観光スポットについて紹介します。
映画「RAILWAYS」で登場した車両を見学
出雲大社前駅には、映画「RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男」の中で最も多く登場した車両「デハニ50形」が保存されていました。
一畑電車伝統のオレンジ色に身を包んだ車両は、今では製造不可能な木製の車体です。
この「デハニ50形」は、1928年~1929年に合計4両が製造され、現在は52号と53号の2両が存在。
しかし、老朽化のため2009年3月末をもって現役引退し、今に至ります。
尚、「デハニ50形」は日本に残っている電車の中でも、最も古い部類に入り大変貴重なもの。
是非見学に立ち寄ることをおすすめします。
車両の中へ入ると、映画の美術スタッフが復元した座席がありますよ。
客貨同時輸送を考慮した荷物室付き車両であり、今ではほとんど見かけません。
更に製造当時では当たり前であった客室の手動扉も、当時のまま残されている点も素晴らしい。
また、先頭へ行けば運転席が見られます。
小さなお子さんは喜ぶかも。
折角の機会なので、貴重な車両「デハニ50形」を隅々まで見学しましょう。
【電車の保存場所】
かつて運行していた電車を保存している場所は、日本全国に点在していますね。旅先で訪れたそんな場所を下記記事で紹介します。
サイクルトレイン「一畑電車」へ乗ろう
通常、電車へ自転車を持ち込む時は、自転車を分解して輪行袋へ入れなけばなりません。
慣れている人でも作業に10~20分程度の時間がかかります。
そのため、電車の出発時刻より、かなり早めに到着していないと、焦って作業する羽目に。
また、電車から降りた後で、再び自転車で走る場合は、自転車の組立てもしなければならず、トータルで20~40分ほど時間がかかるもの。
これだけの時間があれば、ロードバイクならば平均速度にもよりますが、10~15kmほど走れていても不思議ではありません。
そんな手間をかけることもなく、自転車をそのまま電車へ乗せれるサイクルトレインは、とても便利。
車両の一番先頭へ行くと、スペースが空いていましたので、こちらに自転車を置きました。
気を付けなければならないのは、例えサイクルトレインでも、乗客が多い場合は自転車は邪魔になるので、乗せては駄目ですよ。
そんな場合は、時間をずらして乗り込んだ方が無難です。
尚、私が一畑電車を利用したのは平日の午後。
乗客は少なく、自転車を置いても誰にも迷惑をかけません。
後から気づいたのですが、後ろ側の車両には、先頭より広いスペースがあったのでこちらに置いた方が良かったですね。(自転車マークがあったのでこちら側が正式な置き場所)
車両によって椅子の配置が異なっており、長椅子タイプや座席タイプがありました。
座席タイプには、テーブルがあるため、水筒などを置くのに使い勝手が良いです。
出雲大社前駅のホームから眺めた線路の景色は素晴らしく、これから始まる電車旅にワクワクさせられます。
普段、一畑電車へ乗る機会がないのならば、特に鉄道ファンでなくても、旅の思い出として周囲の人たちへ迷惑をかけない範囲で、一畑電車が動き出す前に見学するのも有りでしょう。
【輪行のすすめ】
サイクルトレイン以外では、輪行しなければ電車へ自転車へ持ち込めません。下記記事では、輪行について紹介します。
一畑電車から眺める車窓の風景
電車旅の楽しみと言えば、車窓からの眺めです。
流れゆく景色が次々と変わるのを見ているのは楽しく、時間を経つのを忘れてしまうもの。
出雲大社前駅から松江しんじ湖温泉駅へ辿り着くまでの約1時間、山陰地方の景色を堪能していました。
個人的に気になったのがこちらの景色。
赤い千本鳥居が立ち並ぶ景色を見つけ、「あれは何だ!」と思わずにいられません。
後から調べて分かったのですが、粟津稲生神社(あわづいなりじんじゃ)の鳥居と言うことが分かりました。
この神社のユニークな所は、鳥居と社殿の間を一畑電車が走るという。
まさにフォトスポットですね。
その他に車両基地が見られるのも嬉しいかな。
車両基地は、鉄道車両の滞泊や整備を行うところ。
普段見る機会が少ない方には珍しい施設です。
そして、何と言っても外せないのが宍道湖の景色でしょう。
宍道湖と言えば、日本夕陽百選に選ばれている幻想的な日没の景色が有名。
夕景以外にも天候や季節ごとに様々な顔を見せてくれます。
また、穏やかな湖面を眺め続けていると心が落ち着きますね。
電車が走るにつれ、湖や田園風景、町中など景色が切り替わっていき、電車旅の醍醐味を味わえます。
どこか懐かしい雰囲気を感じる景色を眺めていると、いつしか電車は終点「松江しんじ湖温泉駅」へ到着。
約1時間の電車旅でしたが、感覚的に「もう着いたの」と思えるほど充実した時間を過ごしました。
私は普段の自転車旅では、輪行で電車に乗ることが多いですが、サイクルトレインが利用できるときは、積極的に活用していきたいですね。
手軽に自転車を電車に乗せれるサイクルトレインが、今後益々普及して欲しいものです。
【観光スポットへお出かけ】
一畑電車に乗って観光スポットへ出かけてみましょう。下記記事では、お勧めの観光スポットを紹介します。
まとめ
サイクルトレインで知られる一畑電車に乗って、出雲市から松江市へ移動しました。
自転車を輪行袋へ入れる手間がかからないのは素晴らしく、手軽に「自転車+電車」の旅を堪能できます。
全国的には、まだまだ数が少ないサイクルトレインですが、近年、実証実験を行う自治体が増加中であり、今後の展開が楽しみです。
島根県出雲市や松江市へ訪れる機会があれば、電車に自転車を乗せて電車旅を楽しんでみては如何でしょうか。
【自転車旅の様子を紹介】
自転車旅では、電車を使うことで行動範囲が広がり、旅を満喫した方も多いでしょう。下記記事では、そんな自転車旅の様子を紹介します。