鳥取県鳥取市にある久松山の麓には、鳥取城跡が残り、久松公園が整備されています。
この園内には、白亜の洋館「仁風閣(じんぷうかく)」がそびえ立ち、周囲の風景に溶け込んでいる。その実に華やか景観には、思わず庭先でティータイムをしゃれ込みたくなるでしょう。
また、大ヒット映画「るろうに剣心」のロケ地として知られている。ファンであれば、興奮ものですよ。螺旋階段や宝隆院庭園など見どころも多く、明治時代を知る上で訪れておきたいですね。
本記事では、映画「るろうに剣心」のロケ地を中心に、仁風閣の見どころを紹介します。
白亜の洋館「仁風閣」とは
仁風閣(じんぷうかく)は、中国地方屈指の明治洋風建築として名高く、周囲の景色と調和した美しい建物です。
1907年(明治40年)に第14代当主・池田仲博侯爵により、当時皇太子であった大正天皇の宿泊施設として建てられました。フレンチ・ルネッサンス様式を基調としており、当時もてはやされたデザインですね。
仁風閣の凄いところの1つには、1906年9月に工事を始め、わずが8ヶ月という驚異的なスピードで完成させたことが挙げられます。また、建設費用は約4万4千円と潤沢な予算をつぎ込みました。当時の市役所の年間予算が約5万円だったことを考えると、どれだけ重要視していたのか伺い知れますね。
建物の正面から見ると、セグメンタルぺディメント(櫛形破風)の棟飾りを主要モチーフとした造りであり、至るどころに巻軸模様が見て取れる。
屋根には、クラウン型の棟飾りと6つの煙突がみえ、円形の換気窓がいい感じ。それに、ゴシック風の八角尖塔が建物全体に安定感を与えています。
特に後側にある吹きっ放しのベランダが印象的ですね。ベランダからの眺めも素晴らしく、整備された日本庭園の景色は拍手を送りたい。
延べ床面積は、1,046㎡と広く、ただ美しいだけでなく、凛とした風格を感じ取れるでしょう。
仁風閣の見事な外観や日本庭園の素晴らしさは高く評価されており、1973年に国の重要文化財に指定され今に至ります。
【周辺の見所】
仁風閣周辺の見所を、下記記事で紹介します。
映画「るろうに剣心」の武田観柳邸シーンで撮影された仁風閣
仁風閣は、2012年に公開された大ヒット映画「るろうに剣心」のロケが行なわれた場所です。
るろうに剣心は、もともと週刊少年ジャンプで1994年から1999年まで連載された人気マンガ。アニメ化された作品で、多くの読者や視聴者に支持されました。
2017年9月よりジャンプスクエアで「北海道編」が連載中ですね。2023年に再度アニメ化されたことで、話題となっています。
映画版では、仁風閣が武田観柳(かんりゅう)のアジトとして登場。映画の時代背景から考えても、仁風閣のモダンな雰囲気がピッタリ。
そもそも仁風閣は、アニメ版「るろうに剣心」の武田観柳邸のモデルになった建物なので、ここが選ばれたのも納得です。
武田観柳邸の庭や門、外観などは、基本的に仁風閣が使用されました。
たとえば、高荷恵が武田観柳邸を訪れるシーンでは、門の前から仁風閣へ入っていきます。
斎藤一が庭でくつろいでいる武田観柳に話かけるシーンもありますね。
館内の白壁と白い絨毯の美しさが際立っているバルコニーは、上品で印象的。
窓からは、映画のクライマックスとなった戦闘シーンで使われた宝隆院庭園が広がっていました。
映画を見たことがない方でも、絶景スポットなのでおすすめです。
尚、武田観柳邸内の戦闘シーンに関しては、仁風閣でなく別の場所で撮影されたという。確かに国の重要文化財でそんなことをする許可がでるとは思えませんね。
【カメラに関する話】
仁風閣は写真映えするスポットです。旅の思い出にカメラ撮影を楽しみましょう。下記記事では、カメラに関する話を紹介します。
【見所①】御座所など各部屋の造りや装飾
館内の2階では、当時皇太子であった大正天皇が宿舎として使われていた、当時の部屋を見学できます。皇太子が実際に利用していた部屋は2階にあり、「御座所」や「謁見所」など当時の名称が使われていました。
特に御座所は、この建物内でもっとも豪華な部屋ですね。落ち着いた色彩の空間に、鏡枠の菊花彫刻とカーテンボックスの花柄が調和して見える。また、寝椅子や座椅子は、漆塗りに菊花の蒔絵仕上げですよ。
そして、イタリア産黒大理石のマントルピース(暖炉飾り)が安定感を与えています。
御食堂は、皇太子が食事で利用していたところ。御寝室は、皇太子の寝床であり、上品な色彩がGood。洋館にも関わらず、畳が敷かれていました。日本的で良きかな良きかな。
そんな感じで部屋を見て回っていると厠を発見。
箱の内側は銅張りの引き出し式になっており、砂を入れて使用したものと思われます。皇太子が使われていたことから、当時では最新式のトイレだったのではないでしょうかね。
携帯トイレとして、現代でも使えそうと思ったのは秘密です。(笑)
1階には、従者や世話役が主に使用していた広いフロアがあり、その豪華さに驚きますよ。
また、常設展示室があり、仁風閣のあゆみや鳥取藩のあゆみなど歴史を学べます。一部の展示品は、撮影禁止なので注意しましょう。
こちらは、レゴブロックで作られた仁風閣。うん、良く出来ていて面白い。
館内には、素敵な窓やバルコニーがあるので、写真映えするフォトスポットが多いですね。
それに、知らなければ間違いなくスルーしてしまうのが、建物内の電灯の数々。
当時の鳥取県で初めてシャンデリアとして使われた貴重なものなので、お見逃しなく。
ちなみ仁風館が完成した年に、山陰本線が鳥取まで延長されたことで、県下に初めて電気が開通しました。それだけ皇太子の行啓(外出)が、県下で一大事な出来事だったのでしょう。
【素敵な建築物の紹介】
旅先では、仁風閣のような素敵な建築物へ訪れたりするので、下記記事で紹介します。
【見所②】螺旋階段
仁風閣に入って、右側の奥へ進むと螺旋階段があります。
実はこの螺旋階段には支柱がなく、硬いケヤキを彫った厚板(ささらげた)で支えているのです。このような螺旋階段は、全国的にも非常に珍しい。
当時の職人の技術の高さを伺い知れますね。当然ですが、この階段を上るのは禁止です。
それにしても曲線を描きながら昇っていく姿は、実に絵になる。
2階へ上がって、上から螺旋階段を覗いてみよう。
1階から見上げた時と比べて、全く違う印象を抱きました。個人的には、曲線美を味わえる1階からの眺めの方がよいかな。
館内へ入ったら、1階と2階の両方から見比べるのがおすすめです。
【旅行先での移動手段】
旅行先の足として、レンタカーがあれば色々と便利ですね。下記記事では、レンタカーに関する話を紹介します。
【見所③】東郷平八郎の額と書
2階へ上がる際中に見えてくるのが、「仁風閣」と書かれた額です。
何も知らなければ、そのままスルーしてしまいそうですが、これは海軍大将・東郷平八郎の直筆ですよ。東郷大将といえば、日露戦争時の連合艦隊司令長官。世界三大提督の1人に数えられるVIPですね。
そもそも仁風閣と命名したのも東郷大将でした。過去の偉人の直筆を見られるなんて、実に貴重な機会です。なので、じっくり見ておきたいですね。
また、仁風閣が所蔵している東郷大将の書には、日露戦争の最終決戦となった日本海海戦の出撃命令で使われた有名な言葉があります。
それがこちらの「天気晴朗ナレドモ浪高シ」です。
起草は、当時東郷大将の下で参謀として作戦を考えていた秋山真之ですね。
個人的には、司馬遼太郎先生の著書・坂の上の雲が好きなので、私と同じように「坂の上の雲」の作品のファンならば、この言葉を聞くとテンションが上がるというものです。
【見所④】宝隆院庭園と宝扇庵
仁風閣の後庭となる宝隆院庭園は、鳥取市内でも有数の名園と知られ、鳥取県指定の名勝となっています。仁風閣が建つ以前の江戸時代後期に造られました。
1863年(文久3年)に当時の城主・池田慶徳が、若くして亡くなられた先代の池田慶栄の未亡人である宝隆院(ほうりゅういん)を慰めるために造営されたそうです。
自然林を生かした池泉回遊式庭園であり、落ち着いた和風の庭園でありながら、洋館である仁風閣と見事に調和し、違和感を感じさせません。
また、庭園の西南隅には茶座敷宝扇庵がありました。これらを含めて池のまわりを散策しながら思い思いの時間を過ごしましょう。
仁風閣の基本情報とアクセス
住所 | 鳥取県鳥取市東町2-121 |
電話番号 | 0857-26-3595 |
営業時間 | 9:00~17:00(入館は16:30まで) |
定休日 | 毎週月曜日(ただし祝日の場合は開館) 祝日の翌日 年末年始 |
入館料 | 一般:150円(120円) 小中高生:無料 ※20名以上で団体割引きあり、( )内は割引き後の料金 |
【アクセス】
- JR鳥取駅から徒歩約30分
- JR鳥取駅から100円循環バスくる梨「緑コース」に乗って「仁風閣・県立博物館」で下車後すぐ(バスの乗車時間は約7分)
- 鳥取自動車「鳥取IC」から車で約20分
仁風閣の駐車場
仁風閣には、専用の駐車場がなく、直ぐ近くにある鳥取県立博物館の無料駐車場を利用すると便利です。
仁風閣と一緒に鳥取県立博物館を見学すれば、この土地の歴史についてより深く学べますね。
まとめ
仁風閣は、当時の技術を結集して造られた建築物です。JR鳥取駅から近く、周辺には鳥取城跡や鳥取県立博物館など多くの観光スポットが集まっています。
また、大ヒット映画「るろうに剣心」のロケ地としても知られているので、ファンの方にとっては堪らないですね。
周囲の自然に溶け込み、ただ美しいだけでなく、凛とした風格を感じ取れる仁風閣へ、ぜひ訪ねてみてはいかがですか。