瀬戸内海には、温暖で風光明媚なサイクリングコース「とびしま海道」があります。
とびしま海道は、広島県呉市とその南東に位置する安芸灘諸島の島々を特徴的な橋で結び、海の近くを走る事ができる魅力的なコースです。
私は自転車で呉市からとびしま海道を走り、大崎下島にある「御手洗」の町並み保存地区へ向かいました。
本記事では、サイクリングしながら「とびしま海道」の魅力をたっぷりと紹介します。
とびしま海道とは
瀬戸内海に浮かぶ安芸灘の島々を7つの橋で結んだ海道が「とびしま海道」です。
とびしま海道で巡る島々は「下蒲刈島・上蒲刈島・豊島・大崎下島・岡村島」の5つ有人島がありますが、岡村島から先へ進む事はできません。
岡村島からは、フェリーで愛媛県今治市や大三島へ向かえるよ。また、大崎下島からフェリーで大崎上島へ向かった後で、大崎上島からフェリーで広島県竹原市へ向かえるね。
それぞれの島には、松濤園や町並み保存地区など見所がたくさんあるため、サイクリングの道中に積極的に訪れてみましょう。
世界的にも有名な「しまなみ海道」のお隣にある海道なので、しまなみ海道と合わせて訪れてみるのも良いですね。
とびしま海道は、しまなみ海道をもじって「裏しなまみ海道」と呼ばれたりしているね。
とびしま海道のネーミングは、愛称決定応募作品の中から選ばれ「瀬戸内海に浮かぶ島々は、あたかも庭園をわたる飛石(とびいし)のようで、安芸灘へと通じる海の道」をイメージしているそうです。
愛称は、全国から3,118件の応募があったそうだよ。
とびしま海道の魅力を紹介
海に近いサイクリングコース
とびしま海道は、ほとんど海の近くに道路があり、防波堤も低いため海をとても近くに感じる事ができます。
サイクリングコースには、ブルーラインが引かれているため、道に迷う事はないでしょう。
晴れの日に潮の匂いと波の音を聞きながら、オーシャンビューを横目に駆け抜ける平坦路は、とても気持ちが良く、何度でも走りたい気持ちにさせる名コースです。
とびしま海道は、約30kmとそれほど長い距離ではありませんが、アップダウンが少ないため初心者にも優しいサイクリングコースですね。
風光明媚な町並みや美しい瀬戸内海を眺め、島に点在する観光スポットへ立ち寄りながら、ゆっくりと時間をかけて巡ってみて下さい。
きっと、とびしま海道の魅力にはまるでしょう。
【海の絶景ロードを紹介】
旅を続けていると、とびしま海道のような海の絶景ロードを楽しめるスポットへ出会えますので、下記記事で紹介します。
興味深い物がたくさんある道中
とびしま海道を進んで行くと絶景や珍しい物、興味深い物を見かけたりします。
下蒲刈島の三之瀬地区では、石畳で整備された道が続いているところがあり、この辺りには松濤園などの観光スポットがたくさん点在していますね。
漢文が彫られた大きな石を見つけました。
この石碑の奥には、蒲刈大橋の姿がはっきりと見えます。
蒲刈大橋を渡ると上蒲刈島へ入りますね。
海岸線を進んでいると興味深い機械を発見しました。
いったい何に使う機械なのかな。
この機械の近くには、中国物産(株) 蒲刈砕石所がありましたので、恐らくそこから砕石した石を船へ運ぶための機械なのでしょう。
綺麗で静かな入り江でゆっくりと休みたいです。
綺麗ですね。
何かの儀式でしょうか、それともいたずらかな。たくさんの空き缶やペットボトルが突き刺さっていました。
この行為に何の意味があるのだろうか。
豊浜大橋を渡り、大崎下島へ入ると大きなジャングルジムを目撃しました。日本一のジャングルジムだそうです。
日本一のジャングルジムは、高さ13.2m、幅15.5mも有り、子供が遊ぶには巨大すぎますね。
豊島大橋が開通された時に整備された架橋記念公園にこのジャングルジムは立てられています。
この日本一のジャングルジムは、令和2年12月4日(金)より遊具としての安全基準を満たしていないため、当分の間、利用禁止だよ。
個人的に可愛いと思った煙突です。
暖色のお日様と寒色の魚を描いているセンスが良いですね。
フェンスの向こう側へ行ってみましょう。
白い砂浜に穏やかな瀬戸内海が広がっています。凪の風景を見ていると心が落ち着きますね。
このように「とびしま海道」の至るどころには、興味深いスポットや面白いスポットと出会う事ができます。
島と島とを結ぶ特徴的な橋
安芸灘諸島の島々は橋で結ばれていますが、それぞれの橋を眺めるだけでも面白いです。
とびしま海道では、7つの橋が架けられており、しまなみ海道とはまた違った特徴的な橋が魅力的ですね。
安芸灘諸島には、以下の橋が架けられています。
橋名 | 架けれている場所 | 橋長 | 全幅 |
---|---|---|---|
安芸灘大橋 | 呉市川尻町 ⇔ 下蒲刈島 | 1,175m | 12.7m |
蒲刈大橋 | 下蒲刈島 ⇔ 上蒲刈島 | 480m | 8m |
豊島大橋 | 上蒲刈島 ⇔ 豊島 | 903.2m | 9.85m |
豊浜大橋 | 豊島 ⇔ 大崎下島 | 543m | 8m |
平羅橋 | 大崎下島 ⇔ 平羅島 | 98.5m | 8m |
中の瀬戸大橋 | 平羅島 ⇔ 中ノ島 | 192.8m | 8m |
岡村大橋 | 中ノ島 ⇔ 岡村島 | 228m | 8m |
呉市川尻町から下蒲刈島へ渡るために利用する安芸灘大橋は、車やバイクで通過する場合、有料ですが自転車や徒歩は無料で渡れます。
尚、安芸灘大橋以外の橋は無料で渡れるため安心して下さい。
基本的に島と島の間は1つの橋で渡れますが、大崎下島と岡村島の間には小さな島(平羅島、中ノ島)が2つあり、それぞれに橋を架けているため3つの橋を渡って往来します。
岡村島は愛媛県今治市に所属しているね。それ以外の島は広島県呉市に所属しているよ。つまり、橋の上が県境となっているね。
【美麗な橋、面白い橋の紹介】
旅を続けていると珍しい橋や美しい橋などを目撃して嬉しくなってきますね。下記記事では、そのような橋について紹介します。
とびしま海道で利用する橋を紹介します。
各島に架かっている橋に注目しながら渡ると、各橋の特徴や違いに興味深い発見がありますね。
安芸灘大橋
安芸灘大橋は水色の美しい吊り橋です。瀬戸内海と多島美に良く映り、周囲の景観に溶け込んでいます。
2車線の道路橋では、世界有数の長さを誇る吊橋です。
眼下の景色は、思わず見惚れますね。
見事な透明感に感心させられます。
蒲刈大橋
蒲刈大橋は、とびしま海道で初めて架かった架橋です。
安芸灘大橋と共に美しい架橋風景を作っていますね。下蒲刈島と上蒲刈島を結んでいます。
眼下には、美しい海岸線の景色が遠くまで見通せます。
激しい潮流の場所に架けられた橋であり、当時の最新工法で施工された広島県最大級のトラス橋です。
豊島大橋
豊島大橋の完成を持って、本州から岡村島の「とびしま海道」が繋がる事ができました。
日本国内で架けられた唯一の道路橋吊橋であり、「日本で唯一の21世紀の吊橋」になっています。
眼下の眺めには、海を近くに感じれる海道が遠くまで続いていますね。
豊島大橋は、架橋海域に飛来する広島県の県鳥にちなんで「アビ大橋」の愛称で呼ばれています。
豊浜大橋
豊島と大崎下島を結ぶ豊浜大橋は、三角形に組まれたトラス橋です。
豊浜大橋の周辺では、上空にアビが舞っています。また、この橋の高欄には「アビ」のレリーフが施されているのにも注目です。
平羅橋
大崎下島と平羅島に架かる平羅橋は、とびしま海道唯一のコンクリート橋になります。
日本の斜張橋では、初めてとなるプレキャストブロック工法が用いられていますね。
プレキャストブロック工法とは、コンクリート部材を運搬できる大きさで工場生産を行ない、建設現場へ部材を運んで組み立てる事だよ。
中の瀬戸大橋
中の瀬戸大橋は、大崎下島から岡村島に架かる3橋の内の一つです。
岡村大橋と並んだ2連続のアーチ橋は、瀬戸内の島々の美しい風景が良くマッチしています。
岡村大橋
岡村大橋は、日本国内で唯一海上で県境を跨いでいる橋であり、橋の上には県境ラインが描かれています。
江戸時代の香りが色濃く残る町並み「御手洗」
大崎下島の御手洗地区は、町並み保存地区となっており、江戸時代へタイムスリップした感覚を味わうことができます。
自転車を観光案内所などで駐輪した後で、ゆっくりと街中を散策してみましょう。
路地裏には、歴史を感じる事ができる情緒あふれる建物が並んでいます。
レトロな風景が好きな人にはたまらないスポットですね。
御手洗は、瀬戸内海の重要な港として江戸時代に栄えてきました。
昭和時代初期までの発展を色濃く残す町並みは、当時の生活を物語っています。
尚、御手洗町並み保存地区の詳細ついては、下記記事をご確認下さい。
キャンプを楽しもう
とびしま海道では、キャンプを楽しむ事ができますね。キャンプ場は以下の3箇所あります。
- 上蒲刈島の恋ヶ浜キャンプ場
- 下蒲刈島の梶ヶ浜海水浴場キャンプ場
- 岡村島の正月鼻崎古墳公園キャンプ場
上記3つのキャンプ場の内、上蒲刈島の恋ヶ浜キャンプ場を紹介します。
恋ヶ浜キャンプ場の目の前は、白い砂浜と綺麗な瀬戸内海が広がっていて気持ちが良いスポットです。
恋ヶ浜キャンプ場は、黒松林に囲まれた自然が豊富な場所にあります。
炊飯棟、トイレ、温泉シャワーなどをそろえ、海でレジャーや釣りなどを楽しめるスポットですね。
恋ヶ浜キャンプ場は、7月上旬~8月下旬に開いており、オフシーズンは使用禁止なので注意しましょう。
恋ヶ浜キャンプ場
- 住所 広島県呉市蒲刈町大浦
- 電話番号 0823-66-0597 (大浦区 岡本さん)
- 期間 7月上旬~8月下旬(予約要)
- 料金 1区画3,000円(事前にご確認して下さい)
- 駐車場 有り(事前にご確認して下さい)
恋ヶ浜キャンプ場から南へ約1.3kmほど進むと「県民の浜」と呼ばれる一大健康保養地があります。
県民の浜は、日本の渚百選、快水浴場百選に選ばれているね。海水浴やシーカヤックなどのマリンスポーツを楽しめるよ。温泉施設や宿泊施設も充実しているね。
とびしま海道の観光スポット
白崎園
安芸灘大橋を渡り、下蒲刈島へ入ると直ぐに見えてくるのが白崎園です。
白崎園で特に目を引くのが2本のモニュメントでしょう。
このモニュメントは、陶芸家・今井眞正の作品で「生」のタイトルが付けられています。
長い方が男性、短い方が女性を表しており、春分の日と秋分の日には、この塔の間に朝日が昇るそうですね。
モニュメントには、約3,500枚の手作り陶板を貼り付けているよ。
4月下旬から5月上旬には、約40種類のツツジが咲き誇るスポットになっています。
目の前には、雄大な瀬戸内海を見渡せるため、休憩するのに持って来いですね。
白崎園には、休憩所やトイレ、飲み物の自動販売機が設置されているよ。
白崎園
- 住所 広島県呉市下蒲刈町下島
- 料金 無料
- 駐車場 有り(普通車8台、大型車2台)
松濤園
松濤園は、下蒲刈島の歴史と文化を紹介している資料館と博物館が集まっているスポットです。
松濤園は以下4つの施設があり、それぞれに多彩な資料を展示しています。
松濤園の施設
- 御馳走一番館(旧有川邸、朝鮮通信資料館)
- あかり館(旧吉田邸)
- 陶磁器館(旧木上邸)
- 蒲刈島番所
尚、館内での写真撮影は禁止です。
松濤園
- 住所 広島県呉市下蒲刈町下島2277-3
- 電話番号 0823-65-2900
- 営業時間 9:00~17:00(入館は16:30まで)
- 休館日 火曜日(祝日の場合は翌日)
- 駐車場 50台(無料)
- 料金 大人800円、高校生480円、小中学生320円
- 呉市内の小中高校生は無料。
- 20名以上の場合は、団体料金が適用される。料金は大人640円、高校生380円、小中学生250円。
御馳走一番館(旧有川邸、朝鮮通信資料館)
御馳走一番館は、明治時代に建てられた富山県砺波地方の代表的な商家作りである「有川邸」を移築した物です。
下蒲刈島は、朝鮮からの使者である朝鮮通信使の寄港地となっていた歴史があり、この御馳走一番館では、精密に再現された1/10サイズの朝鮮通信使船の模型や朝鮮通信使来日の様子を描いた絵巻物など当時を偲ぶ資料を多数展示しています。
特に「三汁十五菜」などのもてなし料理が展示されており、「随分と美味しそうな食事だったんだ」と興味深く見学できました。(笑)
朝鮮通信使に関する資料111件333点が、ユネスコの「世界の記憶」に登録されてるね。
あかり館(旧吉田邸)
あかり館では、珍しい世界の灯火器を年代順に展示しています。
あかり館は、山口県上関町の旧家「吉田邸」を移築した江戸時代の家屋です。
吉田氏は、藩政時代に毛利氏へ仕え、造り酒屋や醤油、植物油の製造など幅広く商いをしていました。
西洋ランプや日本の古い灯火器が展示されており、中でも世界有数と言われるフェアリーランプのコレクションは一見の価値があります。
陶磁器館(旧木上邸)
陶磁器館では、伊万里焼などの陶磁器を展示する博物館です。
陶磁器館は、瀬戸内海に浮かぶ宮島の門前町にあった町屋を移築した物ですね。
館内では、中国や朝鮮の陶磁器、日本の瑠璃釉が美しい伊万里焼をはじめ色鮮やかな作品が展示されています。
蒲刈島番所
下蒲刈島では、江戸時代に幕府による番所が設けられていました。
蒲刈島番所は、現存していた毛利藩(山口県上関町)の番所をもとに復元したため17世紀中頃の特徴が見て取れます。
復元された高札場には、幕府の統治上の基本的な法令と重要な施策が掲示されていますね。
掲示内容には、「鉄砲を撃ってはいけない」「物品売買の禁止」「男女がいっしょにいてはいけない」など、現代でも理解できる物もあれば、「何言ってるの?」と首をかしげてしまう物があり、時代を感じます。
昆虫の家・頑愚庵
昆虫の家・頑愚庵(がんぐあん)は、下蒲刈町に生息する昆虫をはじめ、世界に生息する昆虫の標本を展示しています。
また、広島県で絶滅の恐れがある昆虫の標本、昆虫にちなんだ民芸品・美術品が展示されおり、大人も子供も楽しめますね。
特に大人の手のひらより大きな蝶々の標本を見た時は、「こんな大きな蝶々がいるのか」と驚きました。
尚、館内は撮影禁止です。
昆虫の家・頑愚庵
- 住所 広島県呉市下蒲刈町下島2364-3
- 電話番号 0823-70-8007
- 営業時間 9:00~17:00(入館は16:30まで)
- 休館日 火曜日(祝日の場合は翌日)
- 駐車場 100台(無料)
- 料金 大人300円、高校生180円、小中学生120円
- 呉市内の小中高校生は無料。
- 20名以上の場合は、団体料金が適用される。料金は大人240円、高校生140円、小中学生90円。
【博物館・資料館の紹介】
旅を続けていると昆虫の家のような珍しい博物館や資料館へ訪れて色々と勉強させてもらいますね。下記記事では、旅の道中に立ち寄った博物館などを紹介します。
とびしま海道のサイクリングルートとアクセス
下の写真がとびしま海道のルートとなります。(青ラインが引かれている道です)
必ずしもこの青ラインの道を走る必要はなく、青ラインの反対側の海岸線を走ってもかまいません。
約30kmのコースであるため、時間をかけてゆっくりと走りながら島旅の魅力を十分に感じましょう。
1日かけて、各島の観光をしながらゆっくりと走れば満足できる1日を過せるよ。
【アクセス】
とびしま海道のサイクリングの起点は、主に広島県呉市と愛媛県今治市が多いです。
呉市の場合は、呉市川尻町から安芸灘大橋を渡り、下蒲刈島から岡村島へ向かいます。
今治市の場合は、フェリーで岡村島へ移動した後で、下蒲刈島へ向けて進みますね。
その他のアクセス方法の一つとして、広島県竹原市からフェリーに乗って大崎上島へ向かい、大崎上島からフェリーで大崎下島へ向かう事もできるよ。
とびしま海道でサイクリングを満喫しよう
とびしま海道は、ゆっくりサイクリングするために最適な距離と、アップダウンが少ない平坦路となっているため初心者でもサイクリングが楽しめる絶景コースです。
日頃の喧騒を忘れ、ゆっくりと流れる島時間を感じながら気軽に楽しめれるためポイントも高いですね。
瀬戸内海の絶景や江戸時代の古い町並みなど見応えも十分にあり、様々な観光スポットへ訪れてサイクリングを漫喫しましょう。
【サイクリストの管理人からの一言】
とびしま海道では、毎年サイクルイベントが開催されており、多くの参加者で賑わいますね。下記記事では、サイクルイベントの種類や参加前に準備することについてお話します。