日本には「猫島」と呼ばれる島がたくさんあることをご存じの方も多いと思いますが、実は「うさぎ島」と呼ばれる島があることをご存じでしょうか。
瀬戸内海に浮かぶ大久野島は、数百匹のうさぎが暮らすうさぎの楽園であり、毎年国内外から多くの観光客が訪れます。
本記事では、うさぎ島こと大久野島をサイクリングしながら、島の魅力について紹介します。
大久野島がうさぎの楽園と呼ばれる訳
約500匹(2020年1月に確認された範囲)の野生のうさぎが暮らしている大久野島。
瀬戸内海に浮かぶ周囲約4kmほどの小さいな島であり、広島県竹原市に所属しています。
この島に暮らすうさぎは、とても人慣れしていて、近づくと「ご飯ちょうだい」と訴え掛けるような仕草が可愛いですね。
1971年にとある小学校で飼われていた8匹のうさぎを島へ放した結果、繁殖を繰り返し、世にも珍しいうさぎの楽園を築くことになりました。
うさぎが増えた原因について、諸説はいろいろと言われています。
尚、もともとうさぎは繁殖率が高い動物であり、大久野島にはうさぎの天敵となる猫などの害獣が少なく、観光客の餌やりの量が多くなるに従って、年々増加されたと推測できます。
大久野島で暮らすうさぎは、「穴うさぎ」という種類に分類されており、地面に穴を掘って巣を作り、そこで複数のメスとオス1匹が群れをなして暮らしています。
【動物あれこれ】
旅を続けていると様々な動物たちと触れ合ったりしますね。下記記事では、旅の道中に触れ合った動物を紹介します。
かつて地図から存在を消された大久野島の歴史
今では世界中から多くの観光客が訪れる大久野島ですが、かつては旧日本軍が毒ガスを製造していた秘密の島でした。
そのため、日本地図からその存在が消されていた黒歴史があります。
戦争が終わり、しばらく時が経った後で、大久野島は「休暇村」という国立公園に生まれ変わりました。
かつて毒ガス製造に関わっていた施設は、大久野島に点在しており、今に受け継がれています。
うさぎに触れ合いながらサイクリング
忠海港から大久野島へ入港
瀬戸内海に面する忠海港から大久野島へ向かいます。
まずは、ターミナルへ立ち寄ってフェリーの切符を購入しましょう。
近くには、待合所があるためフェリーが到着するまで休憩しておくのも良いですね。
昔、大久野島へ訪れた時は、待合所の隣にある駐輪所へ自転車を駐輪しましたが、今回の旅では大久野島をサイクリングするため、相棒(自転車)と一緒にフェリーへ乗り込みます。
係員の誘導に従い、桟橋で待機していると、フェリーが到着しました。
早速フェリーへ乗り込みます。
大久野島までの船旅は約15分と短いですね。あっという間に大久野島の桟橋へ到着です。
桟橋からフェリーの待合所及び送迎バスの発着場所が見えます。
まずは、フェリーの待合所へ行ってみましょう。
多くの観光客がうさぎの集団と触れ合っていました。
餌を食べているうさぎを眺めていると癒されますね。
サイクリングコースの紹介
大久野島は一周約4kmと短く、うさぎと触れ合いながらゆっくりと見てまわると良いでしょう。
サイクリングのルートは、島を右周りに進みます。
道中には、大久野島ビジターセンターや大久野島毒ガス資料館などのスポットが点在していますので、是非立ち寄ってみて下さい。
大久野島についていろいろと学ぶことができます。(大久野島のスポットの詳細については後述します)
ほとんどフラットの平坦路であり、一部アップダウンがありますが、大したことはありません。
ルート後半には、降車ゾーンと呼ばれるエリアがあり、急な下り坂となっていますのでスピードの出し過ぎに注意しましょう。
降車ゾーンは、道が狭いためゆっくりと進もう。周りに他の人がいる場合は道の譲り合いが大切だよ。
大久野島一周
しばらくの間、うさぎと戯れた後で、大久野島サイクリングの開始です。
自転車のスピードは徐行で進みましょう。
うさぎは道路やビーチなど至るどころにいますので、スピードを出すのは危ないです。
大久野島が「うさぎ島」と呼ばれ今につながる人気を博したのは、2013年に大久野島を訪れた外国人女性に群がるうさぎの動画をYouTubeに投稿された後だと言わています。
その後、テレビ番組や新聞、雑誌などのメディアに取り上げられ、日本国内だけでなく世界中で一躍有名な観光スポットになりました。
海沿いの道を進んでいると、キャンプサイトを発見します。
大久野島では、うさぎと触れ合いながらキャンプができるので、想像するだけで楽しそうですね。
キャンプサイトを横目で眺めながら先へ進んで行くと、凄く目立つオブジェを目撃しました。
実はこれ、うさぎの耳の形をした「集音器」です。
大小様々な集音器がありますので、自分の背の高さに合う集音器に耳をセットすると、海のさざ波や風の音が聞こえてきて、思わず「おー」と声を漏らしてしまいました。
まるでうさぎになった気分ですね。(笑)
海岸線には「キケン!おりるな。」の看板が掲示されていました。
気になったため、そっと近づいてみると、海の中へ続いている階段があり、看板の言葉に納得です。
集音器の周辺には「大久野島ビジターセンター」と「大久野島毒ガス資料館」がありますので、是非立ち寄ってみて下さい。
特に「大久野島毒ガス資料館」の展示品には、毒ガスの悲惨さなどについて、いろいろと考えさせられることがあるね。
ビジターセンターとガス資料館へ立ち寄った後で、先へ進んでいるとヤシの木が立ち並ぶ南国の雰囲気を醸し出す場所へ辿り着きました。
直ぐ近くには、大久野島唯一の宿泊場所である「休暇村 大久野島」が見ます。立派な建物ですね。
宿泊施設だけでなく、芝生広場も広がっていて気持ちの良い場所です。
周辺には、うさぎの姿がちらほらと見えますが、前回島へ来た時に比べて数が少ないような気がしますね。
この時は、たまたま見かけないのだろうと思っていましたが、後からたまたまではない事実を知る事になります。(うさぎが激減?した理由については後述しますね)
道なりに進んでいると、毒ガスの貯蔵庫跡を発見しました。
大久野島には、毒ガスの貯蔵庫跡を複数見ることができます。
尚、毒ガスの貯蔵庫は、今では半分くらい埋め立てられたそうです。
大久野島では、戦時中の遺構がしっかりと残っているよ。毒ガス貯蔵庫もその内の一つだね。
うさぎにとっては、戦時中の遺構など関係ないですね。寝そべっている姿も可愛く癒されます。
綺麗な海を眺めてみると、かつて大久野島で毒ガスが製造されていたことが嘘のように感じます。
今では数百匹の野生のうさぎが暮らす風光明媚なスポットであり、毎年多くの観光客がうさぎと触れ合うために訪れる島へ生まれ変わりました。
いつまでも「うさぎの楽園」のままであって欲しいですね。
穏やかな瀬戸内海を眺めながら先へ進みます。
それにしても本当に綺麗な海ですね。
海岸線を離れると道が狭くなり、上り坂へなっていきました。
突然、道にうさぎが現れますので注意しながら進みましょう。
これも戦争遺構の一つ、砲台跡ですね。
多くのうさぎたちが集まっていました。近くに巣穴があるのかな。
辺りを探して見ると、うさぎの巣穴を見つけました。この穴の中で暮らしているのですね。
上り坂の次は、下り坂です。降車ゾーンと呼ばれるエリアへ到着しました。
道は狭くなっているため、通る時は特に注意しましょう。
降車ゾーンを過ぎると海岸線へ辿り着きます。
ここまで来たら、このトンネルの奥へ必ず立ち寄ってみて下さい。
廃墟となった発電所が見て取れます。
廃墟好きにはたまらないスポットですね。
危ないので決して中へ入ろうとはしないで下さい。(構内は立入禁止です)
発電所跡の直ぐ近くにある桟橋です。
この桟橋は、本州から丸見えのため、機密上使用するのは良くないという理由で使われなくなりました。
桟橋まで到着すれば、ゴールは目前です。
200mも進まない内にフェリーの待合所へ戻ります。
こうして、大久野島一周サイクリングが無事終了しました。
【島旅のすすめ】
旅先で島を訪れた場合、島一周サイクリングは良く行ないますので、下記記事で紹介します。
大久野島のスポット紹介
大久野島ビジターセンター
大久野島ビジターセンターは、大久野島の歴史や大久野島周辺に生息する希少な生き物の紹介をしています。
条件付きですが、館内の写真撮影や撮った写真をブログへ公開することについて職員から了承を頂きました。
館内には、大久野島で撮影した多くのうさぎの写真が展示されています。(個人名が含まれているため撮影はNGです)
また、貝殻やサンゴの標本が展示されており、興味深く見学できました。
大きな木の根にはビックリしますね。
航路をたどって瀬戸内海をクルーズしてみませんか。
大久野島ビジターセンターでは、竹を使った竹和紙作りや大久野島で採集した木の実を使った簡単なクラフト体験ができます。
興味がある人は参加してみるのも良いでしょう。(予約要、有料)
- 住所 広島県竹原市忠海町大久野島
- 電話番号 0846-26-0100
- 営業時間 9:00~16:00
- 休館日 毎週水曜日(1月~2月は水曜日・木曜日)、年末年始
- 料金 無料
大久野島毒ガス資料館
大久野島毒ガス資料館は、戦争に使われた毒ガス製造に関する博物館です。
当時、一部の人を除いて毒ガスの製造に関わった人たちは、自分たちが何を製造していたのか知らされていなかったそうです。
また、1984年(昭和59年)まで日本国内では、旧日本軍が毒ガスを製造していた事実について、ほとんど知られていませんでした。
館内には、毒ガス製造の当時の資料を展示しており、毒ガス製造の悲惨さを訴えています。
- 住所 広島県竹原市忠海町5491
- 電話番号 0846-26-3036
- 営業時間 9:00~16:30(入館は16:00まで)
- 休館日 年末年始(12/29~1/3)
- 料金 19歳以上は150円、19歳未満は無料
- 団体客20名以上の場合、料金は19歳以上120円、19歳未満は無料です。
- 身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳、療育手帳の交付を受けている方は無料になります。
- 竹原市立小学校及び中学校の教科学習又は特別活動で、教員の引率する児童及び生徒は無料です。
館内は写真撮影NGです。ただし、事前に毒ガス資料館取材撮影許可願を提出していると撮影ができます。
【資料館や博物館の紹介】
旅先では様々な資料館や博物館を訪れてその土地の歴史などに触れたりしますね。下記記事では、旅先で訪れた資料館などについて紹介します。
毒ガス貯蔵庫跡
大久野島では、毒ガス貯蔵庫の跡地が点在しています。
休暇村の周辺にある毒ガス貯蔵庫の跡地は、とても目立つため見逃すことはないでしょう。
休暇村の周辺にある毒ガス貯蔵庫から北へ約350mほど進むと案内板が見えるので、案内板の指し示す方向へ歩いて下さい。
毒ガス貯蔵庫の跡地を発見できます。ここの跡地は半ば崩れていますので見逃す人も多いはず。
最期に最も北側にある毒ガス貯蔵庫の跡地です。知っていなければ、この場所が毒ガスの跡地であったとはわかりませんね。
この跡地は、長浦貯蔵庫と呼ばれ島最大の貯蔵庫でした。
かつては、台座の上に直径4m、高さ11mほどの巨大なタンクが6基保管されていたそうです。
黒くすすけているのは、戦後の焼却作業の名残ですね。
大久野島一周のサイクリングルートを進むことで、どの跡地にも立ち寄ることができます。
砲台跡
日露戦争が始まる1902年に設置された大久野島北部にある砲台跡です。
地下壕の外壁は石積みであり、開口部はコンクリートでできていました。
中を覗いて見ると、何もありません。当時はいったい何を保管していたのでしょうか。
かつて、この広場に砲台が設置されていたことが容易に想像できます。
大久野島では、北部以外にも山頂部の中部砲台、沿岸部の南部砲台、計3箇所に16門の砲台が設置されていたそうです。
発電所跡
大久野島の東側にある発電所の跡地です。そこには、発電所の廃墟が佇んでいました。
独特の雰囲気に思わず息を飲みます。
見るからに老朽化が進んでいることがわかるため、構内へ入るのは大変危険なことは一目瞭然です。
そのため、構内は立入禁止になっていました。
毒ガスを製造していた時代に建築された発電所は、その後打ち捨てられ、現代にその姿を残しています。
【廃墟や跡地の紹介】
旅先では偶然、廃墟や跡地を見かけたりしますね。旅の道中で見かけた廃墟や跡地を下記記事で紹介します。
大久野島の注意事項
大久野島で楽しくうさぎと触れ合うためには、以下にことについて守りましょう。
- うさぎを追いかけまわしたり、抱っこしないで
- 道路や道路脇、玄関前でうさぎと触れ合わない
- うさぎの口元に手を出さない
- うさぎに菓子やパンを食べさせない
- ゴミをポイ捨てしない
- 島にうさぎを捨てない
コロナの影響でうさぎが激減?
大久野島を管理する環境省が2018年に島内を調査したところ、約1,000匹のうさぎを確認できました。
観光客から栄養価の高い餌を与えられたことによって、うさぎの数が増加されたと推測されます。
しかし、2020年にコロナの影響で、来島者は激減し、うさぎの餌が少なくなりました。
2020年1月に環境省が調査したところ、うさぎの数が500匹前後になっていたそうです。
明らかにうさぎの見える数は少なくなっていますが、うさぎがたくさん死んでいるとは聞かないため、生活圏が山中へ移ったのではないかと考えられます。
早くコロナ渦が収まり、また多くの元気なうさぎの姿を見たい物ですね。
大久野島の宿泊施設とキャンプ場
大久野島には唯一の宿泊施設として「休暇村 大久野島」があります。
ここで宿泊してうさぎの島に腰を落ち着け、じっくりと見て周りましょう。
宿泊していない観光客でもランチの時間は、館内のレストランが利用できます。
地産食材のご当地グルメなどを堪能しませんか。
大久野島オリジナルの「兎人コーヒー」や「ウサギのはなくソフト」が人気だね。
また、日帰り入浴で瀬戸内海を眺めて旅の疲れを落とすのも一興です。
その他にレンタサイクルがありますので、自転車を借りて島内を走りながらうさぎと触れ合いましょう。
休暇村 大久野島
- 住所 広島県竹原市忠海町5476-4
- 電話番号 0846-26-0321
- 日帰り温泉 せと温泉
- 利用時間は、8:00~18:00です。入浴料は大人420円、小人370円になります。
- レンタサイクル
- シティーサイクルや電動アシスト付き自転車、お子様用自転車を用意しています。
- 利用料金は、宿泊者で2時間毎に400円、宿泊者以外は2時間毎に600円です。
- 電動アシスト付き自転車をレンタルする場合は、上記の金額に2時間毎に200円加算されます。
「休暇村 大久野島」から徒歩7分ほどの場所にキャンプ場があります。
目の前には、瀬戸内海が広がり最高の眺望を楽しめますね。
フリーテントサイトは10区画で、炊事棟やファイヤーサークルなどがあります。
既に設営済みのテントもあるため手ぶらでも大丈夫です。
毛布や調理器具などのレンタル用品も充実しているので、うさぎと戯れながらキャンプを楽しむのも良いでしょう。
尚、キャンプの詳細については「休暇村 大久野島」へご確認下さい。
大久野島のアクセス
大久野島へはフェリーまたは高速艇のみでアクセスできます。
フェリーの航路は2つあり、広島県竹原市の忠海港と大三島の盛港から向かうことできます。どちらも約15分ぐらいの船旅です。
また、広島県三原市の須波港から高速艇で大久野島へ向かえます。(所要時間:約17分)
まとめ
大久野島は、うさぎたちが伸び伸びと暮らしていける自由な場所です。
美しい瀬戸内海を眺めながらうさぎたちの触れ合いは至福の一時ですね。
もし、心が塞ぎ気味だった場合は、大久野島へ訪れてみませんか。
1周4kmと短い距離ですが、サイクリングで潮風を感じながら、うさぎの愛らしく元気な姿を目の当たりにすると晴れやかな気持ちになるでしょう。
【サイクリストの管理人からの一言】
うさぎ島にはたくさんの野うさぎが生活を営んでいます。サイクリングする場合は、散歩のようなスピードでゆっくると走りましょう。下記記事では、自転車で散歩(ポタリング)することについてお話します。