自転車のベルは、義務なので装着している方も多いと思います。けれど、正しくベルを使えていますか。
たとえば、私たちが歩道を歩いていた時に、後ろから近づいてきた自転車が、ベルを「チリンチリン」と鳴らしていた経験をした方は、決して少なくないでしょう。
実は、これ自転車側が交通違反を犯してますよ。「えっ、そうなの。普通に鳴らしているよ」と思った方は、今後は絶対に止めて下さいね。
ベルを鳴らされた歩行者側は、いい気分になりませんし、それが原因で喧嘩になるかも知れません。
それに、自転車のベルは、必要のないときは鳴らしてはいけない決まりがあるのです。それでは「必要なとき」とは具体的に何を表しているのか疑問に思う方も多いはず。
本記事では、自転車のベルの正しい使い方について説明します。
ベルの正しい使い方とは
冒頭で少し触れましたが、自転車にベルを付けるのは、道路交通法により決められています。
つまり、付けなければならない義務がある訳ですね。もちろん、法規で定めている以上、使い方も決まってますよ。
簡単にいえば、道路交通法第54条第2項では「車両等の運転者は、法令の規定により警音器を鳴らさなければならないこととされている場合を除き、警音器を鳴らしてはならない。ただし、危険を防止するためやむを得ないときは、この限りではない」という規定があります。
この規定で「警音器を鳴らさなければならないこととされている場合」とは、具体的にどのような場合なのか分からないですね。
ここでいう場合とは、自転車が特定の場所を通過した場合を意味します。
そこで、ベルを鳴らさなければならない場所を、以下にまとめました。
これらの場所では、ベルを鳴らす必要があるということは、反対にいえば、これら以外の場所では使ってはいけないともいえますよ。
ただし、危険を防止するためやむを得ない時は、ベルを鳴らしても問題はありません。
事故防止のために、自分の存在を相手にアピールするためならば、ベルの使用を許可されていますね。
ここまででも、ベルの正しい使い方が分かっていただけたと思いますが、更に自転車が走る場所別にベルを鳴らしてよいのか次に説明します。
【自転車のルール紹介(その1)】
自転車の運転は、道路交通法により定められていますね。下記記事では、様々な自転車のルールについて紹介します。
ベルを鳴らしても良いシーン
私たちが自転車を運転する場所は、大きく分けて「車道・歩道」の2つに分かれます。
車道には、歩行者や自転車が渡るための横断歩道がありますので、「車道・横断歩道・歩道」に区別して、それぞれでベルを鳴らしてよいのか考えてみましょう。
すると、下表のような関係になります。
基本的に「車道」では、先ほど説明した条件であれば、ベルを鳴らしても良いですが、横断歩道を渡っている歩行者に対しては、無闇に鳴らすべきではありません。
危険があると判断した場合は鳴らしましょう。具体的にいえば、青信号の車道を走行中に、信号無視をした歩行者が侵入してきて、ブレーキをかけても間に合わないと判断したら、ベルを鳴らして、歩行者に危険を知らせるべきです。
歩道は、本来歩行者のための道ですね。自転車が歩道を走るときは、いつでも止まれるくらいのスピードで徐行するのが原則です。
基本的には、ベルを鳴らすのはNG。ただし、転倒や衝突事故などに巻き込んでしまうような危険性がある場合は、ちゅうちょせずベルを鳴らしましょう。
尚、歩道では歩行者に向かってベルを鳴らすのは、立派な違法行為です。違法行為なので、当然罰則もありますよ。その当たりについて次に説明します。
【自転車の修理や処分について】
転倒や衝突事故などで自転車の修理や処分を考えなければならなくなった場合、役立つ話を下記記事で紹介します。
歩道で歩行者に向かってベルを鳴らすのは基本的にNG
自転車が歩道を通過する時は、目の前の歩行者が通行を妨げていたとしても、邪魔という理由のみで、ベルを鳴らしてはいけません。
残念ながら、たまにベルを鳴らしている自転車の運転手を見かけたりします。すると、歩行者側が道を塞いでいた負い目があるのか、自転車の運転手に対して謝罪することも。
本来、これはおかしな話であり、ますます自転車の運転手が増長するキッカケになりますよ。歩行者側も毅然に注意すべきなのですが、国民的気質なのか、穏便にすませてしまうものですね。
その気持ち自体は分からなくもないですが、一番悪いのは、ルールを破っている自転車の運転手側にあります。
先ほども触れましたが、ベルを鳴らしてよいのは、転倒や衝突事故などに巻き込んでしまう危険性がある場合のみです。
それ以外の場合は、立派なルール違反。ルールを破れば以下の罰則があります。
歩行者をどかすためにベルを鳴らすと、20,000円以下の罰金または科料(かりょう)という罰則が適用される。
- 科料とは、軽微な犯罪に科す財産刑。罰金より軽く、徴収される金額は1,000円以上10,000円未満となる。
このような罰則があるのですが、少なくとも私は、この罰則が適用された話を聞いたことがありません。
実際、自転車の運転手が邪魔という理由でベルを鳴らしていたなんて、自己申告でもしないかぎり、法律上では明確に違反していると判断するのは難しいですね。
それでは、「歩行者を追い抜きたい時はどうすればよいのか」といった疑問を思い浮かべる方も多いでしょう。
この辺については、次に説明します。
【自転車のルール紹介(その2)】
様々な自転車のルールについて、下記記事で紹介します。
自転車が歩道で歩行者を追い抜く適切な方法
自転車が歩道を通過する際、歩行者の通行を妨げる行為は、NGになります。
道路交通法の第63条第4項では「普通自転車の進行が歩行者の通行を妨げることとなるときは、一時停止しなければならない」と定められていることからでも明らかですね。
つまり、その場で一時停止するか、自転車を降りて、自転車を手押して歩くのが正しい処置になります。
実際、これらの処置は面倒くさく感じるかも知れませんが、慣れてくると意外に自然にできるようになりますよ。
また、自転車のスピードを落として、歩行者との間隔を空けたままで、歩行者の後ろをついていく選択肢もありますね。
いずれにしても、自転車が歩道を通過する場合は、歩行者側に優先権があることを肝に銘じて下さい。
自転車を一時停止するより、もっとスマートな方法がないか考えてみると、行きつく先は「ベルを鳴らさずに、前を歩く歩行者に気付いてもらえばよいのでは」と思いいたるでしょう。
もちろんその考えは、間違っておらず有効な手段があります。
最も有効で安全な方法は、ずばり「声をかける」ですよ。
歩行者に対してベルを鳴らせば、相手に不快な気持ちをさせますが、声かけの場合はそんなことはありません。
お互いが気持ち良く通行するためにも、自転車側が通過する際に一言「すみません」と声に出して下さい。
そうすれば、気持ち良いコミュニケーションが取れます。
自転車側が「すみません」という気持ちでベルを軽く鳴らしたとしても、歩行者側にとっては、「さっさと避けろ」と聞こえてしまうものです。
その結果、トラブルを引き起こしたりしますね。そのため、歩行者への意思表示は、言葉で行なうのが無難です。
【ご参考】警音器はベル以外でもOK
道路交通法では、ベルを名指している訳ではなく「警音器」と指定しています。
このことから、自転車につける警音器はベルに限定されていません。つまり、電子音が鳴り響く警報器なら何でもOKと解釈できますね。
ようは、車のクラクションと同じ考えなので、自転車に取り付けられる小型の警音器を使ってみるのもありですよ。
ベルと電子警音器を比べてみると、電子警音器は、スイッチを押すだけで、ベルより大きな音を出せるのが素晴らしい。しかし、電池切れになったり、防水でなければ雨で壊れたりします。
個人的には、やっぱりベルの方が使い勝手が良いですね。
【自転車のアイテム紹介】
自転車用のベルやそれ以外の便利なアイテムを、下記記事で紹介します。
まとめ
本記事では、自転車のベルの正しい使い方について説明しました。
最後にもう一度、説明した内容を以下にまとめます。
- ベルを鳴らすタイミングは、以下の場所を通過する場合(ただし、危険を防止するためやむを得ない時は、以下の場所以外でもベルを鳴らしてよい)
- 左右の見通しが悪い交差点
- 見通しの悪い曲がり角や上り坂の頂上
- 「警笛鳴らせ」の標識がある道路
- 自転車で歩道を通過する際、目の前の歩行者に向けてベルを鳴らすのはNG(罰則あり:20,000円以下の罰金または科料が適用される)
- 自転車が、歩道で歩行者を追い抜く際は、「声をかける」方法がスマート
交通ルールを守って、自転車のベルを正しく使い、安全に走りましょう。