ロードバイクやクロスバイクなどでは、路面の勾配に合わせて適切なギアを変速機を使って組み合わせていきます。
そのおかげで激坂も上れる訳ですが、使わない方が良い組み合わせがありますよ。
そんなこと言うと「えっ、普通に全ての組み合わせを使っているけど、全然問題ないよ」と思われる方もいるでしょう。
しかし、自転車部品メーカーから非奨励の組合せについてお達しがあるのです。(メーカーによっても見解は様々ですが・・・)
その組み合わせは2つあり、それぞれアウターローとインナートップと呼ばれています。
この2つは所謂チェーンのたすき掛けのことであり、様々な理由で奨励されていません。
本記事では、アウターローやインナートップが非奨励な理由についてお伝えします。
アウターローやインナートップは使わない方が無難
ロードバイクやクロスバイクを初めて買って乗った時に、自転車ショップの店員からフロントギアとリアギアの組合せで「やってはいけない組合せがある」ことについて、教わった人も多いでしょう。
それが、アウターローとインナートップと呼ばれるギアの組合せですね。
尚、この2つの組合せはあくまで非奨励なだけであって、使えない訳ではありません。
自転車部品メーカーにより、見解が異なったりしていますが、一般的に奨励されていないことが浸透しているのが現状です。
その理由として主に以下の2つが挙げられます。
- パーツを余計に消耗させる
- ペダリングのパワーロスにつながる
尚、これらについては、後で詳しく説明します。
確かに上記の理由ならば、あえてアウターローやインナートップを使いたいとは思えませんね。
それ以外にも、アウターローの状態でフロントをインナーに落とすと、チェーンが内側へ行こうとする力が大きくなるため、チェーン落ちするリスクが増大したりして敬遠されています。
尚、この2つの組合せを使用しなくても、他のギアの組合せでほぼ代用できてしまうため、あえてアウターローやインナートップに拘る必要性がありません。
変速機の操作でアウターローやインナートップを使わないことをお勧めします。
アウターローとインナートップについて
本記事の冒頭でもお話しましたが、アウターローとインナートップとは所謂チェーンのたすき掛け(クロスチェイニング)のことです。
つまり、ギアの組合せが以下の状態のことを指します。
- アウターローは、リア側の一番大きなギアとフロント側が一番大きなギアの組合せ
- インナートップは、リア側の一番小さなギアとフロント側が一番小さなギアの組合せ
尚、アウターローやインナートップの呼び方は、スポーツ系自転車に乗っていないと知らない人も多いと思いますので、これ以外のギアの組合せについても以下に紹介します。
- リア側の一番大きなギアとフロント側が一番小さなギアの組合せのことを「インナーロー」と言います。最も軽いギアの組合せで激坂では良くお世話になりますね。
- リア側の一番小さなギアとフロント側が一番大きなギアの組合せのことを「アウタートップ」と言います。最も重いギアの組合せで、ペダルを漕ぎ続けることで、最大限のスピードを出せますね。但し足へかかる負担は最も大きいです。
チェーンのたすき掛け(クロスチェイニング)が非奨励な理由
パーツを余計に消耗させる
自転車は多くのパーツ(部品)で構成されている乗り物です。
チェーンのたすき掛けをして乗り続けていると、チェーンへは横方向へ多大な力がかかります。
そのため、チェーンやスプロケットの余計な消耗につながりますね。
特にアウターローの状態で、ずっと走り続けているとリア側の変速機にあるテンションプーリーへ無理なトルクがかかり続け、片べりしてしまう可能性があります。
その結果、チェーンがプーリーから脱輪したり、酷い場合にはチェーン自体が動かなくなってしまうかも知れません。
あえて危険を冒してまで、チェーンのたすき掛け(クロスチェイニング)を行なう必要性はないでしょう。
【チェーンは消耗品】
チェーンは消耗品であり、使い続けていると伸びてきて変速性能が悪くなりますね。下記記事では、チェーンの寿命などについて紹介します。
ペダリングのパワーロスにつながる
チェーンがたすき掛けになると言うことは、チェーンラインが斜めな状態です。
このような状態で、ペダルを漕いでいてもパワーが外へ逃げていくため、パワーロスが最も大きくなります。
つまり、下図のような関係になる訳ですね。
チェーンが真っ直ぐならば、フロントギアのチェーンリングによるチェーンを引っ張る力がそのままダイレクトにリアギアへ伝わるため、パワーロスは起こりません。
しかし、チェーンが斜めになることで、リアギアを回すパワーは小さくなってしまいます。
これは、ギアが回転する方向とスプロケットの軸方向へ力が分散されているからですね。
そのためチェーンが斜めになるほど、パワーロスが大きくなるのも納得です。
たすき掛けに対する自転車部品メーカーの見解
主な自転車部品メーカーでコンポーネントを販売しているメーカーと言えば、「シマノ、カンパニョーロ、SRAM、FSA」ですね。
それぞれのメーカーによって、チェーンのたすき掛け(クロスチェイニング)に対する見解の相違がありますので、以下にまとめました。
メーカー | 見解(コメント) |
---|---|
シマノ | クロスチェイニングには反対であり、推奨しない。 |
カンパニョーロ | クロスチェイニングには反対であり、推奨しない。 |
SRAM | クロスチェイニングに賛成。メリットが大きく、言われるような駆動損失も皆無に等しい。コンポーネントの摩耗もない。 |
FSA | クロスチェイニングには好意的。しかし、チェーンの負担はやはり大きくなるものと考えている。 |
シマノとカンパニョーロでは、クロスチェイニングは非奨励だけど、SRAMとFSAは賛成しているため、見解が真っ二つに割れているのが現状です。
個人的には、シマノのコンポーネントを愛用しており、本記事で記載した非奨励の理由が妥当であると判断していますので、クロスチェイニングはしない運用が無難だと考えます。
【ブレーキに関する話】
コンポーネントには、ブレーキも含まれますね。ブレーキはスピードをコントロールする重要部品です。下記記事では、コンポーネントの話が出れば欠かせないブレーキについてお話します。
電動コンポはクロスチェイニングができません
近年、販売されているシマノの「DI2」のような電動変速コンポーネントの場合では、アウターローやインナートップなど極端なギア比になる前に、自動でフロントギアを調整する機能が備わっています。
自分からあえて設定変更しなければ、基本的に極端なクロスチェイニングになることはありません。
変速機の操作ミスにより、アウターローやインナートップのギア構成にしてしまう恐れは皆無となり、安心感がありますね。
インナートップは自転車の保管時に良い
一般的に自転車を保管する時は、ギアの組合せをインナートップにしておくと良いと言われています。
主に言われている理由は以下の2つです。
- チェーンにかかる負荷(テンション)が最も低い
- ケーブルの張り(ケーブルテンション)が最も低い状態になるため、ケーブルの伸びを防ぐ効果がある
走行時では、インナートップはチェーンやスプロケットへ非常に大きな負荷がかかりますが、停止中ならば、かかる負荷と言えば、リアディレイラーが引っ張るバネの力だけであり、たかが知れています。
そのため、ほとんど影響がないと考えて良いでしょう。
また、インナートップの状態では、フロントディレイラーとリアディレイラーに組み込まれているバネがほとんど解放状態になるため、バネの劣化を防ぐ効果もあると言われています。
理論上は、インナートップで自転車を保管すると良いと思えるね。しかし、どこまで効果があるのか本当のところはわからないよ。
【自転車の寿命】
自転車の扱い方や保管状態により、寿命が延びたり縮まったりしますね。下記記事では、自転車の寿命についてお話します。
現状ではクロスチェイニングは行わない方が無難です
ロードバイクやクロスバイクに慣れてくると、意識しないでも路面状況に応じて適切なギアの切り替えを行なえるようになります。
その際、アウターローやインナートップは行わないよう意識しましょう。
もし、ギアの切り替え操作を誤ってアウターローやインナートップにしてしまい、その状態で走り続けたとしても短い時間や距離ならば、余り影響は少ないですね。
将来的には、完全にクロスチェイニングが大丈夫になるような機構が開発されるかもしれませんが、現状では避けた方が無難です。
特に長距離サイクリングや自転車旅では、クロスチェイニングにより、パーツに余計な負荷を与えたり、パワーロスに繋がるような運転は慎みましょう。