「自転車のイメージとは」と聞かれたら、多くの人はママチャリをイメージするのではないでしょうか。
それほど、日本国内ではママチャリが世の中に広く浸透しており、人によっては生活に欠かせない存在になっていますね。
普段から普通にママチャリと言っていますが、「ママチャリ」の名前の由来について深く考えた人はあまりいないでしょう。
そのため、ママチャリが正式名称と思っている人がいても不思議ではありません。
ママチャリの名前の由来や定義を知れば、もっと自転車が好きになるかも。
また、ママチャリならぬパパチャリも存在していることには驚きです。
本記事では、ママチャリの名前の由来や定義、正式名称などを含め、ママチャリの歴史を紐解きます。
ママチャリの原点とは
町中を歩いていると、買い物中のお母さんや、学校へ通学している学生など多くの人がママチャリを運転している姿を見かけます。
その昔は、自転車は高級品であり、誰もが買える物ではありませんでした。
そう考えると、お手頃な価格でママチャリが買える今の時代に感謝です。
もともと自転車のことは、チャリンコという俗称で呼ばれており、自転車に興味がなくても知っている人は多いでしょう。
なぜ、自転車のことをチャリンコと呼ぶのかは以下のような諸説があり、明確には分かっていません。
- 自転車のベルの音が「チャリンチャリン」と聞こえるから
- 「がんばれ!!ロボコン」という子供向けの特撮テレビドラマの影響
- 韓国語で自転車を表す「チャジョンゴ」が由来
個人的には、「ベルの音」の諸説が正しいのではないかと思っています。
私は視聴したことがないですが、「がんばれ!!ロボコン」では自転車のことをチャリンコと表現していたそうですよ。
ママチャリの前身となるのは、婦人用ミニサイクルです。
ミニサイクルとは、タイヤが小さなタイプの自転車のことで、日本では1960年代に登場しました。
この自転車は、母親(ママ)が扱う自転車(チャリンコ)と言う意味で「ママチャリ」と呼ばれることに。
つまり、婦人用ミニサイクルこそが、ママチャリの原点ですね。
当時の女性は、自転車を使用していなかったのですが、この婦人用ミニサイクルが大ヒット商品となり、それと共にママチャリの言葉は広く浸透しました。
その後、婦人用ミニサイクルは廃れていくのですが、「ママチャリ」という言葉だけが残り、今も受け継がれています。
かつて婦人用ミニサイクルで使われていた「ママチャリ」の俗称が、いつのまにか使用範囲が広がり、今では、シティーサイクルや軽快車全般を指しますね。
そのため、「自転車のイメージとは」と聞かれたら、ハンドルが曲がっていて乗りやすいフレームのママチャリをイメージする人が多いのです。
ママチャリの正式名称について
ママチャリの名前は、あくまで俗称です。
一般的にママチャリと呼ばれる自転車は、シティーサイクルや軽快車と呼ばれるもの。
人によっては、「シティーサイクル=軽快車」と思っている方もいると思いますが、厳密に言うと少し違います。
一番分かりやすい見分け方は、ハンドルの形状ですね。
シティーサイクルのハンドルは、真っ直ぐなタイプのオールラウンダーハンドルと呼ばれるもの。
軽快車のハンドルは、ハンドル部分が手前に曲がっているセミアップハンドルになっています。
その他にもシティーサイクルのスタンドは、片足1本のものが多かったり、軽快車はほぼ両立スタンドが多いといったように、細かな違いはあるものの概ね同じ自転車です。
そのため、シティーサイクルや軽快車をひっくるめて、ママチャリと認識しているのは、間違いではありません。
まとめると、ママチャリと呼ばれる自転車は以下の2つ。
ママチャリは、これら日常生活に適した普段使いの自転車に使われる俗称と覚えておくと良いでしょう。
ママチャリの定義を考える
先ほど説明した通り、ママチャリは、シティーサイクルと軽快車を指しています。
しかし、ママチャリと言う言葉はあくまで俗称のため、決まった定義がありません。
つまり、JIS規格が定めた自転車の分類に当てはまっていないのです。
けれど、日本自転車普及協会では、以下のような定義を定めています。
この定義を聞いて、何となくイメージが付きますが、「少し漠然としているのでは?」と思うのは私だけではないでしょう。
具体的に挙げると、以下の条件に全て当てはまるような自転車だと言えますね。
- 大きな前カゴや荷台(キャリア)が装着されている
- フレーム形状は、ダブルループ形・L形・U形
- ハンドル形状は、アップ形やストレート型(アップ型のイメージが強いかな)
- ドロヨケやチェーンカバー、スタンド、ライト(概ね車輪に接触させて発光するタイプ)が付いている
このような特徴を言えば、ママチャリのイメージも分かりやすい。
端的に言えば、買い物用自転車の一言で表せます。
【自転車を趣味にしよう】
お気に入りのママチャリに乗って様々な場所へ移動していると、自転車で走ること自体が楽しくなってきますね。すると、いつの間にか趣味になることも。下記記事では、自転車趣味に関する話を紹介します。
ママチャリの歴史を紐解く
ママチャリの原点となる婦人用ミニサイクル以前にも、女性用の自転車が存在していました。
それが「女性用軽快車」です。
この軽快車の歴史を見ていきましょう。
1945年(昭和20年)代後半になると、エンジン付きバイクが普及されましたが、それに伴い自転車業界は少しづつ落ち込むことに。
そこで自転車業界では、これまで自転車に乗っていなかった女性に注目するようになりました。
女性向けということなので、「スカートや小柄な人も乗りやすいフレーム」「取り外し可能な前カゴがある」「車体が軽い」などといった、いくつものの課題克服に取り込みます。
そして、ついに1956年(昭和31年)に「女性用軽快車」が満を持して登場したのです。
価格もこれまでの自転車より安く、月払いでもOKでしたので、たちまち人気商品に。
この女性用軽快車によって、女性が自転車を良く利用するキッカケとなりました。
1967年(昭和42年)になると、ヨーロッパではタイヤが小さい(18~20インチ)ミニサイクルが流行し始めます。
そして、日本では前カゴを標準装備したミニサイクルを売り出すようになり、大ヒット商品となった次第です。
しかし、ヒットしていた期間も僅か数年、誰もが予想もしていなかった大問題が世界で勃発しました。
1973年(昭和48年)にオイルショックが起こり、日本は急激な物価上昇に見舞われ、日本各地でパニックに。
トイレットペーパーの買いだめなど、社会問題に発展したことを知っている人も多いでしょう。
当然そのような社会情勢ですから、自転車業界も低迷しない訳がありません。
その解決手段として、女性用軽快車とミニサイクルを合わせた自転車を販売することにした訳です。
これが「ママチャリの原点」となります。
こうして生まれた婦人用ミニサイクルが、大ヒット商品となり、それに伴い「ママチャリ」の俗称が広く浸透しました。
現代では、ママチャリも進化を遂げ、価格面だけでなく様々な工夫が取り入れられています。
例えば、非常に錆びにくいアルミやステンレスをフレームの素材に使ったり、路面からのショックを和らげるサスペンション機構などがありますね。
また、ママチャリタイプの子供乗せ自転車、電動アシスト付き自転車も販売され、日常に使う足として、男女問わず幅広い世代に愛され使われています。
【ママチャリでサイクリング】
ママチャリは、買い物用や通勤通学に使われることが多い移動手段ですが、サイクリングも楽しめますね。下記記事では、ママチャリでサイクリングを楽しむコツなどについて紹介します。
ママチャリならぬパパチャリも存在する
自転車業界で売上No.1の大手自転車チェーン店として知られる「サイクルベースあさひ」から、父親(パパ)向けの自転車が販売されました。
それがいわゆる「パパチャリ」です。
パパチャリは、以下のコンセプトをもとに開発した自転車で、あさひがライフスタイル情報誌「Daytona」と自転車工房チムチムレーシングと共同開発したそうですよ。
子供の送迎でもカッコよくありたいと願うパパたちの声を拾い上げ、様々な工夫を凝らして設計されました。
カッコよいデザインで、パパだけでなく子供も乗りたがる物でありながら、チャイルドシートがマウントできることを第1に考えられています。
また、そんな自転車なので、子供だけなく沢山の荷物も運べるという。
ブレーキはディスクブレーキを採用し、後輪には極太ファットタイヤを装備。
正式名称は、「88CYCLE(ハチハチサイクル)」。
世の中の情勢として、家事や育児に時間をさく男性も増加しており、そんな世の中にマッチした自転車といえますね。
まとめ
ママチャリの名前の由来や定義、パパチャリについて解説しました。
ママチャリは、その言葉通り、母親を表す「ママ」と自転車の俗称「チャリンコ」が合わさってできた言葉です。
ママチャリは、厳密に言えばシティーサイクルと軽快車に分かれるのですが、世の中一般では、ママチャリと言った方が通じやすいですね。
今後もママチャリは、進化を遂げることは間違いありません。
例え時代が進み、どのようなママチャリが登場したとしても、根っことなる「日常生活に適した普段使いの自転車」になることは変わらないはずです。