「直島のイメージは?」と問われたら、現代アートの島と答える人が多いですね。
3年に1度開催される「瀬戸内国際芸術祭」の中心的な役割を果たしている島であり、国内外から多くの観光客が現代アートを目的に訪れます。
今回の旅は、この直島をサイクリングしながら野外展示されているアート作品を見て周りました。
本記事では、サイクリングの道中に感じた直島の魅力についてお伝えします。
直島とはどんなところ
直島は、香川県に所属している瀬戸内海に浮かぶ周囲約16km、面積8キロ平方メートルの小さい島です。
上図の地図で分かるように位置的には、四国(高松市)より岡山県玉野市に近い場所にあります。
人口約3,100人と決して多くはありませんが、瀬戸内国際芸術祭により知名度が上がった影響で年間約60万人の観光客が訪れると言われています。
2000年には、世界的な旅行雑誌「Conde Nast Traveler」で紹介され、世界でも知る人ぞ知る観光スポットになりました。
直島は「Conde Nast Traveler」の旅行雑誌で、世界で訪れるべき7つの場所の1つに選ばれたそうだよ。
小さな島のため、サイクリングをしながらゆっくりと島を一周しても、2~3時間もあれば十分に見て周れますね。(多くのアート作品をじっくり見てまわるのならば、半日以上は必要です。)
【島旅のすすめ】
直島のように瀬戸内海にはサイクリングに適した島々がたくさん浮かんでいますね。下記記事では、そのような島々を紹介します。
アートの島になった経緯とは
直島は、今でこそ「現代アートの聖地」と呼ばれていますが、少し前までは銅の精錬所がある過疎の島でした。
この島の状況を一遍させたのが、当時直島の町長であった三宅親連氏と今で言うベネッセホールディングス、当時の福武書店の創業社長である福武哲彦氏の出会いです。
福武氏は「世界中の子供たちが集まって、自然の中でのびのびと過ごせる場所を瀬戸内海の島に作りたい」という夢があり、三宅町長と意気投合したそうです。
しかし、福武哲彦氏は急逝してしまい、息子の福武總一郎氏が後を継ぎます。
總一郎氏は、親交のあった建築家である安藤忠雄氏とともに、1988年に「直島文化村構想」を実施しました。
この構想は、現代アートを基軸にしていたため、アートの島のきっかけになったそうです。
【アート作品やオブジェの紹介】
旅先では様々なアート作品やオブジェを見かけることがありますので、下記記事で紹介します。
直島をサイクリング中に発見したアート作品の数々
直島と言えば、やはり島に点在する野外アート作品でしょう。
岡山県玉野市の宇野港から渡航して、直島の宮浦港へ到着すると、「赤かぼちゃ」がお出迎えしてくれました。
特徴的な赤いボディに黒丸が描かれているかぼちゃは、前衛芸術家である草間彌生の作品です。
この赤かぼちゃは、中へ入れます。
水玉模様の内部は、丸窓から陽光が差し込み幻想的な雰囲気を味わえますね。
直島には、赤かぼちゃの他に黄色いかぼちゃもあったのですが、2021年8月に発生した台風の影響で突堤から吹き飛ばされ、荒波に洗われて3つに割れてしまいました。
下記地図は、黄色いかぼちゃ(南瓜)があった場所です。
一日でも早く復活することが待ち遠しいですね。
宮浦港から南へ約300m離れた所には、「直島パヴィリオン」と呼ばれるモニュメントが発見できます。
大きなモニュメントであるため、フェリー乗り場からでも目立ちますね。
このパヴィリオンは、27の島々で構成される直島町の「28番目の島」というコンセプトで作られています。
昼間は子供たちが遊ぶ遊びになり、夜はライトアップされる素敵なモニュメントですね。
直島パヴィリオンは、三角形のステンレス製のメッシュが約250枚で構成されているよ。
宮浦港から東へ約100mほど進むと、「直島銭湯 I♥湯(I LOVE YU)」があります。
直島唯一の銭湯であり、独特な外観をしていますね。
建屋を見上げて見ると、骨組みが見えているため、心配になります。
近くにあるゲストハウスで宿泊して、独特な銭湯へ入りに行くのも良いですね。
宮浦港の直ぐ近くでは、「赤かぼちゃ」「直島パヴィリオン」「 直島銭湯 I♥湯 」の3つの現代アートを見ることができるよ。
直島町本村地区へ向かうと、縄が巻かれた船の竜骨を模した木彫の作品「漣」を見つけました。
縄と言えば「しめなわ」を思い浮かべますね。
この作品は海を眼前に、船の神聖性とその骨格を直島につなぎとめると言う意味が込められているそうです。
近くの路地裏を通ってみると、おしゃれな案内板がありました。これを考えた人のセンスが光りますね。
こちらはバス停のアートです。「下矢印」はベンチに座って待てということでしょうか。
また、住宅の壁には人の姿が描かれていたりしました。
こちらも人の姿が描かれていますが、私はそれより、ペンキが剥がれている部分が人に見えて意図した物なのか、それとも偶然なのか気になります。
直島の南の海岸線沿いにもアート作品が野外展示されていますが、ベネッセ関連の宿泊先で宿泊しなければ立ち入ることができないため、今回の旅では訪れていません。
日常に溶け込むアート作品が面白い
直島をサイクリングしていると、珍しい興味深い物を次々と発見しました。
まずはこちら。初めてこれを見た時は、「面白い!黒くて丸いカエルかな?」と驚きましたね。
これは「浮玉かえる」と呼ばれている作品です。
壊れたり、古くなった浮き球(ブイ)を使って作られた作品で、サイクリングの道中、至る所で目撃しました。
「浮球かえる」は島内に300体以上いるそうです。
存在だけでもユニークですが、周りのシチュエーションとうまくマッチしており、見ていて楽しめます。
定食屋「島食Doみやんだ」の建屋の周りには、たくさんの浮玉かえるに会えるのでお見逃しなく。
直島町本村地区にある公衆トイレの直ぐ近くに不思議なモニュメントを見かけ、「なんだ、これは!」と驚きの声を上げました。
このモニュメントは一体何なのか、近づきモニュメントの中を覗いてみると、自転車や原チャリが駐輪されていました。
つまり、ここは駐輪場だったのです。
初見では絶対にわからないですね。(笑)
駐輪場だけでなく、船の待合所にもなっているよ。
この駐輪場の周辺には、可愛らしいカフェも見かけました。
また、ラブラブのベンチを発見。カップルご用達でしょうね。(笑)
路地裏には、犬の頭の形をした石が飾っていました。
目は描いているようでしたが、この石を発見して、外観や段差、ひびの割れ方などを見て「これは犬だ」と感じたセンスに脱帽です。
道中見つけた「極楽寺」の前へ通りかかるとなぜか惹かれる物を感じました。
門をくぐり抜けて境内へ入ると、本堂のカラフルな造形にビックリです。
龍の造形が愛らしく感じました。
木彫りのお地蔵さんは、何だか新鮮ですね。
極楽寺は本堂や鐘楼、客殿など全てが町指定文化財に指定されていて、とても大切にされているのが良くわかりました。
極楽寺を後にして見つけたのは、大きく特徴的な建物です。この写真を見て下さい。独特な屋根ですね。
この建物は「直島ホール」と呼ばれていて、ホールと集会所の2棟構成になっています。
また、スポーツやレクリエーション、文化・芸能活動などの各種団体の活動拠点にもなっており、多くの町民に親しまれていますね。
直島ホールの隣には、モダンな建物が建てられており、目を引きます。
この建物は、直島の町役場です。町役場には全く見えない外観ですね。
後から知ったのですが、直島には、直島建築と呼ばれる公共建築群があり、町役場の他にも小中学校など新時代を思わせる外観の建物があることを知りました。
直島の南の方にある高台を走っていると、目の前に何やらユニークな物を目撃します。
この高台を上る坂道は激坂であり、結構大変でしたが、トトロのバス停を発見することでテンションがグーンと急上昇。(笑)
可愛らしいトトロの絵にほっこりです。
高台を下って宮浦港へ向かっている道中に骸骨が運転するバイクを目撃しました。
全く面白い作品ですね。暗い夜道で灯りが無い時に目撃したら、腰を抜かすかもしれません。(笑)
周辺には特に説明書きがありませんでしたので、作品名は不明です。
先ほどお話しました「直島パヴィリオン」から宮浦港よりの沿岸にありましたので、気が付かずに通りすぎてしまうかも知れません。
直島をサイクリングしながら一周すると、珍しく面白い作品や建造物などをたくさん目撃できて十分に楽しめました。
古民家を活用した「家プロジェクト」
直島町本村地区には、古民家を改装して作品化した「家プロジェクト」と呼ばれる物があります。
家プロジェクトには、7つの全く個性の違った作品があり、それぞれ「角屋」「南寺」「きんざ」「護王神社」「石橋」「碁会所」「はいしゃ」に分かれていますね。
家プロジェクトの周辺地図は下記になります。拡大縮小しながらご確認下さい。
それぞれの古民家では、アーティストが時間と空間を乗り越えて、かつて人が住んでいた頃の記憶を織り込みながら作品化しています。
家プロジェクトの建屋に入るには、チケットが必要になりますので、「本村ラウンジ&アーカイブ」で購入しておきましょう。
残念なことに私が訪れた日は休館日だったようで、チケットの購入ができませんでした。(泣)
家プロジェクト
- 住所 香川県香川郡直島町本村地区
- 電話番号 087-840-8273(本村ラウンジ&アーカイブ)
- 営業時間 10:00~16:30
- 休館日
- 月曜日(ただし祝日の場合は開館、翌日休館)
- 「きんざ」のみ月曜~水曜が休館日
- 料金
- 「きんざ」以外の6件をまわれる共通チケットは1,030円
- 1軒だけ見てまわれるチケットは410円
- ※「きんざ」のみ予約制です。
この建屋は「はいしゃ」です。外からでもわかる独特な雰囲気を醸し出しています。
壁には歯のモチーフが描かれていました。まさしく「はいしゃ」を意識させられますね。
家プロジェクトの特徴を下表にまとめました。
家プロジェクト | 特徴 |
---|---|
角屋 | 暗い建物の中に水が張ってあり、その中でライトが点滅している作品です。 |
南寺 | ジェームス・タレルさんと安藤忠雄さんによるアート作品を楽しめます。 |
きんざ | 見学には予約が必要です。内藤礼さんの作品を楽しめます。天候によって表情がかわる不思議な空間です。 |
護王神社 | チケット不要で氷のような階段を見れます。地中にある作品にはチケットが必要となります。 |
石橋 | 千住博さんの「ザ・フォールズ」「空の庭」という作品を楽しめます。 |
碁会所 | 須田悦弘さんの「椿」という作品を楽しめます。 |
はいしゃ | 大竹伸朗さんの「舌上夢/ボッコン覗」という作品を楽しめます。 |
綺麗な海を眺めながらサイクリングを楽しもう
直島の魅力は、アートの島だけではありません。
瀬戸内海の穏やかで綺麗な海を眺めながらサイクリングを楽しめます。
時には自転車から降りて、海を眺めて佇みましょう。素敵な時間を過ごせますね。
砂浜に埋没した背の低い鳥居ですが、アート作品ではありません。
この埋没した鳥居の周辺には、琴弾地(ごたんぢ)海水浴場があります。
海水浴場ではありますが、監視員やレスキューはいませんので、遊泳は自己責任です。
毎年夏には、この一帯で「直島の火まつり」が行われています。
また、直ぐ近くには宿泊施設「つつじ荘」があり、海水浴場と隣接しているため、ベンチに座りながら海を眺めて休憩ができます。飲み物の自動販売機もあるため、休憩場所に持ってこいです。
海岸線を離れて山中に入って行くと、大きな池を目撃し自然の豊かさをより実感できますね。
山を下ると、浮玉かえるが見守る海岸線へ辿り着きます。
小さな鯉のぼりを頭上高々に泳がせながら、何を思っているのでしょうか。
澄んだ海を眺めていると、いつの間にか心が落ち着き癒されますね。
直島はアートの島だけでなく、穏やかな瀬戸内海を眺めながらサイクリングができる絶景スポットなのです。
【瀬戸内海を眺めながらの自転車旅】
瀬戸内海は内海であるため、穏やかですね。そのため見ているだけで心が落ち着きます。そんな瀬戸内海を眺めながら自転車旅を行なった様子を下記記事で紹介します。
直島はアップダウンが多い道、電動アシストがおすすめ
直島をサイクリングする時の注意事項として、それなりにアップダウンが多い事が挙げられます。
特に南側のベネッセアートゲートがあるところからは、急激な激坂(県道256号)となり、斜度が10%を越えるところもあるため、坂が苦手な人は電動アシスト付きの自転車がおすすめです。
尚、ベネッセ関連の宿泊先で宿泊していれば、ゲートを通過して海岸線を走れるため激坂を上る必要はありません。
海岸線の近くには、数々のアート作品が展示されているよ。
激坂を上りながら眼下を眺めて見ると、そこには絶景が広がっているため、これはこれで有りですね。
激坂の距離は、約700mと短いため、無理して自転車で坂道を上る必要はなく、自転車を降りて歩いて進むと良いでしょう。
【サイクリストの管理人からの一言】
E-Bikeのような電動アシスト付き自転車を使えば坂道は楽に上れますね。また、普通の自転車でも坂道を楽に上るコツはありますので、下記記事で自転車の運転技術と電動アシスト付き自転車についてお伝えします。
レンタサイクルを借りてサイクリング
宮浦港フェリーターミナルの目の前には、数件のレンタサイクルショップがあります。
自分の自転車を持ってきていない場合、自転車をレンタルしてサイクリングに出かけましょう。
尚、それなりにアップダウンが多い直島では、電動アシスト付きの自転車がおすすめです。
直島のアクセス
直島へのアクセスは、主に以下の2つを利用します。
- 岡山県玉野市の宇野港からフェリーまたは旅客船で渡航
- 香川県高松市の高松港からフェリーまたは高速旅客船で渡航
宇野港からフェリーで直島の宮浦港まで約20分です。尚、自転車や車を載せれない旅客船では約15分かかります。
また、宇野港から旅客船で直島の本村港まで約20分です。(フェリーはありません)
高松港からフェリーで直島の宮浦港まで約50分です。尚、自転車や車を載せれない高速旅客船では約30分かかります。
まとめ
直島は、周囲16kmとサイクリングの距離としては物足りないところもありますが、珍しいアート作品を見てまわれるスポットが目白押しなので、非常に楽しめます。
全てのアート作品をじっくり見学するには、半日以上はかけたいですね。
直島へ訪れる機会があれば、是非サイクリングをしながら、ゆっくりと時間をかけて島をまわりましょう。
【サイクリストの管理人からの一言】
直島のアート作品はそれなりに多いので、全て見て周ったり体験するのならば下調べをしてから旅の計画を立てると効率よく周れますね。下記記事では、自転車旅の計画の作り方について紹介します。