原子番号「22」、元素記号「Ti」で示される「チタン」。チタンは、金属単体として様々な形で広く使われるレアメタルの一つです。
チタニウムとも呼ばれ、メガネなど私たちがよく使用する日用品から、航空機やスペースシャトルまで幅広く活用されています。
様々な製品に使用されている素材なので、もちろん自転車にも使われている。チタンフレームの自転車は、まさに走る芸術品。何より所有欲を満たすロマンにあふれます。
チタンフレームは加工が大変なためことで知られていますが、その素材の特徴は、自転車のフレームとして相性が抜群ですね。
本記事では、チタンフレームの特徴についてお伝えし、チタンフレームの自転車は実用性が高いということを学べます。
自転車旅にうってつけ、チタンフレームの種類と特徴
チタンフレームのロードバイクのことを「所有欲を満たす趣味性の高い乗り物」と思っていませんか。
ある意味間違ってはいませんが、正解ともいえないですよ。チタンフレームで作られたロードバイクは、決してロマンだけの存在ではなく、実用性が高いです。
軽くて乗り心地が良く、長期間・長時間乗っていても疲れにくい。金属フレームなので、輪行をする場合でもそれほど気をつかう必要がありません。つまり、自転車旅やロングライドにうってつけといえますね。
そんなチタンフレームですが、大きく分けて以下の2種類に分かれます。
- 3AL2.5Vチタンフレーム
- 6AL4Vチタンフレーム
「3AL2.5Vチタンフレーム」は、アルミが3%、バナジウムが2.5%配合されていて、大多数のチタンフレームはこの素材で作成されている。このフレームは、ペダルの踏み込みに対して素直に進みます。
「6AL4Vチタンフレーム」は、アルミが6%、バナジウムが4%配合されていて、高級なチタンフレームに使用されていますね。
6AL4Vチタンは、ペダルに押し戻るような反発がありますが、軽いギアで回している時は余り感じなく、重いギアの場合は入力に対して跳ね返りを感じる。
つまり、ともて反応がよいため、押し戻るような反発にリズムを合わせると非常に良く進んでくれますね。
実際、自転車旅では、それほど高い巡行速度を出すわけではないので、押し戻るような反発は気にならないですよ。
私は10年以上、チタンフレームのロードバイクに乗り続けていますが、その性能にほれぼれしています。
自転車旅では、その真価を遺憾なく発揮してきました。何日も旅を続けていける快適性は、まさに旅に使うのが正しいともいえる。チタンフレームのロードバイクに乗り続けるたびに、その魅力にハマり今に至ります。
そこで、そんなチタンフレームの特徴を以下にまとめました。
- 高強度で軽い
- 抜群な乗り心地
- メンテナンスが楽
- 非常に高価
それぞれについて説明します。
【特徴①】高強度で軽い
カーボンフレームに次いでチタンフレームが軽いと考えている人は多いと思いますが、本当にそうでしょうか。
金属の比重で比較すると、アルミの比重は2.7g/cm3、チタンの比重は4.5g/cm3、クロモリの比重は7.8g/cm3となります。
このことからわかるように、チタンはアルミと比べて明らかに重いですね。
なぜ、チタンフレームはアルミフレームより軽くなるかといいますと、チタンの方が少ない材料でアルミと同じ強度、剛性が実現可能だからです。
そのため、チタンフレームは軽くなります。
【ホイールに関する話】
自転車の走りの軽さを重要視するならば、フレームの軽さよりホイールの軽さが大事です。下記記事では、ホイールについて色々お話します。
【特徴②】抜群な乗り心地
チタンにはクロモリと同じような「しなやかさ」があります。なので長時間乗っていても余り疲れません。
私の経験では、昔、佐渡島のサイクルイベントで外周約210kmを周ったことがあるのですが、アルミフレームとチタンフレームのロードバイクでは疲労度が段違いでしたね。
乗り比べたロードバイクのハンドル、シートポスト、フォークはカーボン製、ホイールはアルミ製を使用していたのでフレームの素材だけが異なっている状態です。
210km走った結果は、以下の通り。
- アルミフレームの場合は、ゴール後のイベント会場の芝生広場でしばらく仰向けになって休憩する。まさに満身創痍の状態。
- チタンフレームの場合は、210km走り終わった後でもまだ十分な余力あり。
比べた時期は1年間も開きがあり、その間に走行技術や体力が向上した可能性もあるので、一概にいえないですが、それでもフレーム素材の違いによる影響度は大きいと判断しています。
【サイクルイベントに関する話】
私はチタンフレームのロードバイクに乗って、様々なサイクルイベントへ参加していますが、いずれも快適に過ごせました。そこでサイクルイベントに関する話を紹介します。
【特徴③】メンテナンスが楽
実はチタンは表面のみが酸化されます。
そうすると、錆びやすいと思われるでしょうが、緻密な酸化皮膜を作りチタンの内側から腐食するのを守っているため、錆に物凄く強いのです。
ほとんど腐食しないため、メンテナンスが楽であり、一生モノと呼ばれる所以です。
【特徴④】非常に高価
チタンは自然界に豊富に存在しています。
すると、安価な素材だと思われるかも知れませんが、加工するのが非常に困難な金属です。
機械による大量生産に全く向いていないため、職人が一本一本丁寧に作成しています。そのためどうしても値段は高価になるのは仕方がありません。
けれど、チタンフレームの自転車は一生大事に乗れるため、長い年月を乗り続ければ、費用対効果はそれほど悪くないですよ。
チタンフレームの歴史
チタンは、18世紀にイギリスの鉱物学者にして寺僧であったウイリアム・グレゴーがイギリスで発見しました。
イギリスで発見された未知の元素を発見地の名前にちなんで「メナカン」と名付けられます。その後、ドイツの科学者クラプロートが成分分析を行い、特異的な酸化物であることを発見しました。
チタンがフレーム素材として用いられたのは、アルミと同じく1970年代の初めです。
当初はイギリスやアメリカでフルチタンのロードフレームを発売したのですが、クロモリフレームの剛性には全く及ばなかったそうですね。
1990年代に入ると、アメリカのライトスピードやマーリンなどのメーカーが、優秀なチタンフレームを作れるようになりました。
特に1990年代前半には、プロの中でもエース級の選手がチタンフレームを使っていたそうだね。
チタンフレームを作っているメーカーの紹介
チタンフレームは世界各地で作られていますが、加工が困難なため作れるメーカーが限定されます。
そのメーカーの一部をご紹介します。
メーカー名 | 国籍 | 特徴(私の私見も交えています) |
---|---|---|
DE ROSA (デローザ) | イタリア | デローザのチタンフレームは、ロングライドでもヒルクライムでも、極めて快適性が高いフレームとして位置づけられています。 |
Panasonic (パナソニック) | 日本 | パナソニックのチタンフレームは「パナチタン」とも呼ばれています。独自のオーダーシステムで自分独自の自転車を実現できます。 |
TIG (ティグ) | 日本 | チタン専門店。ロードバイクから車椅子まで幅広いチタン製品を取り扱っています。 チタン専門の会社であるため、チタン加工技術が優れてます。 |
LITESPEED (ライトスピード) | アメリカ | チタン製自転車のパイオニア。チタンの加工技術はトップクラスであり、火星探査機のためにチタン製ランディングギアの製造をNASAから依頼されたほどです。 |
まとめ
本記事では、チタンフレームの特徴について説明しました。
最期にもう一度、説明した内容を以下にまとめます。
- チタンフレームの種類
- 3AL2.5Vチタンフレーム
- 6AL4Vチタンフレーム
- チタンフレームの特徴
- 高強度で軽い
- 抜群な乗り心地
- メンテナンスが楽
- 非常に高価
チタンフレームの特徴から、自転車旅やロングライドにうってつけの自転車が作れますね。
そんな自転車だからこそ、長く乗り続けていくたびに、その魅力にハマるでしょう。