自転車のチューブは、大きく分けるとブチルとラテックスに分かれます。
ラテックスは、昔からあるチューブの種類ですが、ブチルと比べて一般的にそれほど使用されている印象がありません。
「チューブを変えることで、それほど変わるものなのか」と思っているあなた。明らかな変化に気が付きますよ。
かくいう私も初めは、チューブをブチルからラテックスに変えるだけで大きな効果が得られるとは思っていませんでした。しかし、実際に体験することで、その疑いを良い意味で裏切ってくれたのです。
残念ながらラテックスは、ブチルと比べて明らかに大きい効果がありますが、欠点もあります。そのため、人によって向き不向きがハッキリ分かれますね。
一体、ラテックスの実力はいかほどの物でしょうか。
本記事では、ラテックスチューブのメリット(効果)やデメリット(欠点)について説明して、どのような人がラテックスチューブを使えば良いのかお伝えします。
自転車を使う用途によってラテックスチューブを使う
私は、今ではブチルチューブを使っていますが、一時期ラテックスチューブを使っており、その恩恵に預かってきました。
しかし、自転車に乗る用途がハッキリ固まってくると、ラテックスの欠点による影響が大きくなり過ぎて卒業してしまった次第です。
それでもラテックスの性能自体は素晴らしく、自転車を使う用途によっては、使い続けるに越したことはありません。
そこで、ラテックスの主なメリットを以下に3つ上げます。
それぞれのメリットについては、後でくわしく説明しますが、上記に挙げたメリットは、自転車を乗る上で喉から手が出るほど欲しい性能ですね。
チューブをブチルからラテックスに交換するだけで、それが叶うのなら誰しもがラテックスを使い続けるでしょう。
しかし「空気が抜けやすい」「熱に弱い」といったデメリットもあり、使う人を選ぶチューブなのです。
特に空気が抜けやすいのは、数日ロングライドや自転車旅を続けていくには、かなり厳しいデメリットになります。
反対に言えば、日帰りサイクリングや1日単位でしっかりメンテナンスを行うロードレースなどでは、その実力を遺憾なく発揮できる訳です。
ラテックスチューブは、人によって確実に向き不向きがありますが、自転車を使う用途によっては心強い見方になるでしょう。
ラテックスとは何もの?
ラテックスチューブは、植物由来の天然ゴムで作られたチューブです。
原料には、ゴムノキの樹液を使いますね。新鮮なものは白い液で、時間と温度で凝固するとか。
そして、1週間ほど経過するとベージュのゴム色になります。ブチルの原料は石油であり、合成科学ゴムで作られるため、素材からして全く別物。
そのため、ラテックスはブチルと比べて、柔らかく弾力性があり薄くしても破れにくい特徴があります。
ラテックスはチューブ以外では、医療用の手術時などに使うゴム手袋やコンドームなどで使うことを知っている人も少なくないでしょう。
ラテックスの固着力は強力なので、パンク防止剤のシーラントにも使われているよ。
ラテックスは、昔から使われてきた素材なので安心感がありますが、天然ゴムなためアレルギーがある方は注意が必要です。その場合は、無理してまで使う必要はないでしょう。
ラテックスチューブのメリット
先ほど説明しましたラテックスチューブのメリットをもう1度紹介します。
- 乗り心地が素晴らしい
- 転がり抵抗が低く、巡行速度が上がる
- パンク性能が高い
それぞれについて説明します。
乗り心地が素晴らしい
ラテックスはブチルより柔らかくしなやかなため、同じ空気圧ならば断然ラテックスの方が乗り心地が良いです。
路面には小石のような極小の凹凸があることが普通ですが、そんな凹凸が全く気にならないほど振動吸収性が素晴らしい。
当時私は、アルミのロードバイクへ乗っていたため、ラテックスチューブの恩恵をもろに受けましたね。
加速していると、今まで「ゴー」と聞こえてきた音が「コー」に変わっていました。音の違いだけでも分かるように、振動が少なく感動した記憶が残っています。
路面から自転車を通じて伝わる振動は、例え小さくても体に負担が蓄積されていくもの。チューブ一つで改善ができるのは、嬉しいですね。
聞くところによると、カーボンのロードバイクでは余り違いを体感できないという。
アルミフレームやホイールを使っている方は、ラテックスチューブを使えば、より乗り心地の改善が図れます。
転がり抵抗が低く、巡行速度が上がる
ラテックスチューブを使っていると、自転車の停車時から漕ぎ出しが軽くなります。
それだけではなく、巡航速度がわずかばかり上がりました。(私の場合は1km/h?程度)
「チューブを変えただけで、スピードに影響があるのか?」と思っている方も多いと思います。
ひょっとするとプラシーボ効果かも知れませんが、スピードが上がると信じてた方が幸せかも。
この事について調べて考えてみた結果、ラテックスチューブは、ブチルと比べて軽量であり転がり抵抗が低いため、スピードにわずかばかりの影響を与えると判断した次第です。
パンク性能が高い
ラテックスチューブは、ブチルに比べてパンクに強い特徴があります。
異物を踏んでパンクした場合は、一気に空気が抜けたりせず、スローパンクになる場合が多いですね。
状況にもよりますが、スピードが出ている状態で、パンクして一気に空気が抜けると落車する危険性が高いため、スローパンクになってくれるのは有難い。
しかし、パンク性能でラテックスを選ぶ人は、それほどいないと思いますので、おまけ程度の特徴だと思っておきましょう。
【パンクに関する話】
自転車トラブルで最も多いのはパンクですね。下記記事では、パンクに関する話を紹介します。
ラテックスチューブのデメリット
ラテックスチューブのメリットは、素晴らしいものばかりですが、残念ながら以下のデメリットがあります。
- 空気が抜けやすい
- 熱に弱い
それぞれについて説明します。
空気が抜けやすい
ラテックスは、ブチルより密度が薄いため、その分空気が抜ける量が多いです。
個人的には、この空気の抜けやすさが、ラテックスチューブ最大の欠点だと思っています。
1日に1~2Bar減るなんて当たり前で、ラテックスチューブの特徴について知らない人ならば「スローパンクしている」と思うのが普通ですね。
空気が抜けるのが、あまりにも早いため自転車の乗り方に気を付ける必要があります。自転車に乗る前に毎回空気圧を調整しているのならば、特に気にする必要はないでしょう。
しかし、ロングライドなどで1日に10時間以上も自転車を乗り回しているのならば、ラテックスチューブは使わない方が無難です。
12時間程度で1Barは減りますよ。また、体重にもよりますが、体重が荷重として加わるため、更に空気の抜ける量は加速してしまうかも。時間が経つにつれ、走行性能に明らかな違いを体感できます。
こればかりは、ラテックスの素材による影響なので対策の立てようがないですね。
熱に弱い
ラテックスチューブは、天然ゴムで作られているため、熱に弱い特性があります。
天然ゴムの耐熱性は、連続使用の場合は70℃、瞬間的な場合は120℃と言われていますが、そんな温度に達するまで自転車を運転することはないと思われる方も多いのではありませんか。
しかし、条件次第ではあっさり耐熱温度の70℃を越えることも。カーボンリムのホイールを使っている人は注意が必要ですよ。
カーボンリムは熱伝導率が悪く、ホイール内に熱がこもりやすいです。
そのため、ダウンヒルなどで長時間ブレーキを使用していると、70℃に達することもあるとか。
大変危険なため、カーボンリムを使っている場合は、ラテックスチューブを使用しない方が無難です。
尚、アルミリムの場合でも長時間のブレーキは、熱の発散性が高いとは決して言えませんので気を付けましょう。
真夏のように気温が高い日では、ラテックスチューブを使わないのが良いかも知れません。気温30℃でアスファルト表面の温度は、60℃を越えることもあるそうですよ。そんな状態では、ラテックスチューブを使う勇気は私にはないです。
【真夏のサイクリングの注意点】
真夏にサイクリングする場合は、熱中症に気を付けましょう。下記記事では、真夏に自転車を運転する際、気を付けることを紹介します。
ラテックスチューブが活躍するシーン
ラテックスチューブが最も活躍できるシーンと言えば、ロードレースでしょう。
レースなので他の参加者とタイムを競い合うことが多く、レースによっては比較的短い時間で終わります。
有名なツール・ド・フランスでも短いステージでは2~3時間で走り終えていたり、長くても6~8時間程度ですね。
自転車へ乗る前に空気圧を調整すれば、レース中にラテックスチューブの恩恵のみを受けれる訳です。
ロングライドや自転車旅ではラテックスチューブは不向き
自転車の用途をロングライドや自転車旅をメインにしている場合は、ラテックスチューブをお勧めしません。
特に連日泊りがけで出かける場合は、毎朝、宿泊先で空気圧の調整が必要になります。
そういうのを苦にしない人は問題ないかも知れませんが、そうでない人にとってはかなり億劫ですよ。
宿泊先にフロアポンプがあれば話は別ですが、携帯済みの小型の空気入れでは、空気を入れ直すのに手間がかかりますね。
そのため、私はラテックスチューブを卒業した次第です。
ブチルチューブならば、1週間で1Bar程度しか空気が減らないので使い勝手が良いよ。
【自転車旅に関する話】
自転車旅には様々な魅力がありますね。下記記事では、自転車旅に関する話を紹介します。
ラテックスチューブを使い続けるのに向いている人
ラテックスチューブは誰にでも使えますが、ある意味使う人を選びます。
サイクリングやロードレースなどで、自転車に乗る前に必ず空気を入れ直している人にとっては良い選択肢ですね。
ラテックスチューブは、ブチルチューブと比べて比較的高価ですが、一本1,000~2,000円程度なので、それほどお財布に厳しくはないでしょう。
特にアルミのロードバイクに乗っている方は、格安で乗り心地が改善できるアイテムなので是非試してみて下さい。
きっと走りの違いに驚くはずです。
まとめ
本記事では、ラテックスチューブのメリットとデメリットについて説明しました。
最後のもう一度メリットとデメリットについて、以下にまとめます。
- 振動吸収性が高く、乗り心地が良くなる
- 漕ぎ出しが軽く、わずかばかり巡航速度がアップする
- パンク性能が高いため、例えパンクしてもスローバンクになることが多い
- 空気が抜けやすい
- 熱に弱い
ラテックスチューブの特性を良く理解した上で、自転車を使う用途により使うかどうか判断しましょう。