自転車の最大の友は「風」であり、最大の敵も「風」です。
追い風の力をかりて走れば、簡単に速く走れて最高に気分が良いですね。反対に向かい風の中を走らなければならなくなると、ゲンナリするもの。
「一生懸命にペダルを漕いでも、全く前へ進まない」そんな困った経験をした方は、かなり多いと思います。
実は、向かい風が吹いている最中でも、楽に走れる秘訣があり、実践するのはそれほど難しくないですよ。なので、是非コツを掴んで、向かい風の苦手意識を克服してほしいですね。
本記事では、向かい風の中でも、自転車で楽に走れる方法を説明します。
向かい風がツライ原因と効果的な走り方
強めの向い風が吹いている中を、自転車でスピードを出して走った経験が豊富な方でしたら、肌感覚で走りにくい原因が分かる方も多いと思います。
原因を一言で表すなら「空気抵抗」ですね。この原因を理解していなければ、効果的な対策はとれません。
あまりスピードを出さずに走っていれば、特に空気抵抗を気にはしないものです。しかし、スピードが上がるにつれ、空気抵抗は、あなたに牙をむきだしますよ。
たとえば、自転車で20km/hのスピードで走っていた場合、前進するための抵抗の60~70%が空気抵抗になります。
実際、空気抵抗を強く意識するのは、スピードが30km/h以上になった時でしょう。
分かりやすく説明するために「5m/sの向かい風が吹いている」と仮定してお話します。
おそらく、5m/sと聞いてもピンとこない方が多いと思いますので、これを時速に換算すれば、18km/hの風が向かってくることになる。こう聞くと、かなり大変だと意識せざる得ないですね。
この場合は、20km/hのスピードで走っていたとしても、38km/h(20 + 18)で走っている場合と同じ空気抵抗を受けているのです。
この事実により、向かい風が吹いている状態では、自転車は前に進みにくい原因がよく理解できます。
また、向かい風だけでなく、横風が吹いている中を走る時も空気抵抗を受けてますね。
原因が分かれば、対策をとることで楽に走れるようになれますよ。
そこで、向かい風の中でも楽に走れる効果的な方法を以下にまとめました。
それぞれについて説明します。
向かい風に効果的な走り方はいわば「運転技術」ですね。実は運転技術以外にも意外に効果があるのが、メンタル面の強化ですよ。
多くの人は、向かい風に苦手意識を持ちますが、嫌々ながら走っていれば、早い段階で失速します。そこで「長い坂道をゆっくり走っている」ような感じで走れば、結構失速しないものです。是非お試しあれ。
【走り方①】ギアを軽くしてスピードを落とす
自転車のスピードを上げるほど、空気抵抗は大きくなってきます。
つまり、スピードを落とせば空気抵抗が小さくなる訳ですね。足の筋力の無駄使いを避けるためにも、ギアを軽くして走るのがベストです。
間違っても重いギアのままで走らないように。そんな状態では、無駄に体力を消耗しますよ。いつも以上に早い段階で疲れてしまい、かえってスピードが遅くなるだけです。
一般的には、空気抵抗は速度(スピード)の2乗に比例して大きくなるといわれています。
たとえば、20km/hのスピードならば、10km/hで走っている時と比べて、4倍の空気抵抗が増えてしまう計算になりますね。
なので、軽いギアにしてスピードを落とすのは、至って合理的な判断です。
また、ギアを軽くすることで、ペダルが1周する間のパワーの強弱の差を小さくすることが簡単にできるようになります。
このことで、一定の力でペダリングが可能になりますね。すると、余計な体力消耗を防ぎ、リズミカルに前へ進むことができますよ。ようは、ヒルクライムと同じ感覚で走っているといえるでしょう。
【走り方②】前傾姿勢をできるだけ深くとる
自転車へ乗車時における空気抵抗の約8割が、自分の体だということを知っていますか。
つまり、風を受ける面積を減らせば、空気抵抗は和らぐ訳です。そこで、空気抵抗を受ける面積を減らす手段の1つが、前傾姿勢となります。
ただし、あまりにも前傾しすぎると、ペダリングが窮屈になるので気を付けて下さい。
また、バランスを崩してしまう原因にもなりかねないので、無理のない範囲で前傾姿勢をとりましょう。
ロードバイクで使用しているドロップハンドルであれば、前傾姿勢は簡単にとれますね。
しかし、ママチャリやクロスバイクのように、持ち方が1つしかないタイプのハンドルであれば、深く前傾姿勢をとるのは困難です。
必ずしも前傾姿勢が取れない訳ではありませんので、無理のない範囲で体を小さく縮めれば、それなりの効果を発揮しますよ。
また、前傾姿勢以外にも、脇を締めたり、膝が広がらないようにすることで、空気抵抗を減らせますので、合わせて取り入れましょう。
ドロップハンドルの下ハンドルを握れば、自然に前傾姿勢を取るフォームになります。
この体勢に慣れていない方は、無理をしてまでそのフォームを維持する必要はないですよ。無理なフォームのままで走っていれば、早く疲れてしまい、かえって失速する原因になりかねません。
なので、ずっとキープできる程度の前傾姿勢をとるのがポイントですね。
【ドロップハンドルに関する話】
ドロップハンドルは、複数の握り方ができるため非常に便利です。そこで下記記事では、ドロップハンドルに関する話を紹介します。
【走り方③】集団走行が効果的
複数人で走る集団走行では、空気抵抗を軽減させるとっておきの方法が使えます。
テレビなどでロードレースの試合を見たことがある方は、選手たちが一列になって走っていることを知っているでしょう。
あれは、先頭を走る選手が風よけになっているんですよ。つまり、後ろについている選手は、風の抵抗を減らせるので、思った以上に楽に速く走れます。
これは「スリップストリーム」と同じ原理ですね。
この走り方は「トレイン」といって、向かい風の中を走るときには、強力な武器になります。
ただし、慣れていない方は、どうしても前の人にピッタリくっついて走るのは怖いかも知れません。
そこで、前に走っている自転車と自分の自転車の間に、自転車2個分のスペースを空けて走ってみましょう。
ピッタリくっついて走るより効果は薄れますが、それでも空気抵抗が弱まることを実感できますよ。
友達や知人と走る時には、一列になって空気抵抗を減らして走りましょう。その際の注意点は、集団走行では一定時間で先頭を交代しないと、先頭を走る方は1人でつらい思いのまま走ることになります。
ゆえに、無理のない時間で、先頭を交代しながら走るのがポイントですね。
サイクルジャージとレーパンを着ると空気抵抗が下がる
先ほども触れましたが、空気抵抗の約8割が自分の体です。実は、服装しだいで空気抵抗を和らげる効果がありますよ。
特にサイクルジャージとレーパンは、非常に優秀です。自分の体にフィットしているので、自転車で走っていてもバタつきません。
Tシャツなどと比べれば、明らかに効果の違いがでますね。
また、サイクルジャージとレーパンは空気抵抗の低減だけでなく、吸汗速乾性や紫外線カットなどサイクリストにとって嬉しい機能が多いです。
気を付けなければならない点として、ジャージの前を空けて走るのは、やめた方がいいですよ。実はこれが一番空気抵抗を増しますね。これは、サイクルジャージだけでなく、全ての上着にいえます。
人気漫画・アニメ「弱虫ペダル」に登場する泉田塔一郎が本気で走る時は、ジャージの前を締めるのは、このため。空気抵抗を最大限に減らし、スピードを出しているのです。
気を付けよう、向かい風は危険も伴う
自転車で走る場所や天候によっては、向かい風は猛威をふるうことがありますね。
周囲に建物が多い住宅街では、建物が風をある程度防いでくれますが、橋の上や川のそば、海岸線を走っている時には、風を遮るものが何もないため、強く風の影響を受けてしまいます。
風の威力が強すぎると、体ごと飛ばされることも。
特に台風の中を走る時は、強風の影響で看板など障害物が飛んでくることもあり危険です。そんな日は、自転車で走らないのが無難ですよ。
まとめ
本記事では、向かい風の中でも、自転車で楽に走れる方法を説明しました。
最期にもう一度、説明した内容を以下にまとめます。
- 向かい風が吹いていると、自転車のスピードが速くなるほど、空気抵抗が大きくなる
- 向かい風の中で、空気抵抗を少なくする方法は、以下の3つの走り方が効果的
- ギアを軽くしてスピードを落とす
- 前傾姿勢をできるだけ深くとる
- 友達や知人などと複数人で走る時は「トレイン」が有効
- 自転車へ乗る際の服装は、サイクルジャージとレーパンにすれば、空気抵抗が下がる
本記事で紹介した向かい風の時の走り方は、実践するのがそれほど難しくありません。なので、是非コツを掴んで、向かい風の苦手意識を克服すれば、今以上に確実に強くなれます。