自転車業界の中でも、とりわけロードバイクに乗っているサイクリストには、同類のみだけに通じる自転車用語(スラング)があります。
ロードバイク歴が長くなればなるほど、スラングのキレは増すばかりかも。けれど、そんなスラングも意外に意味が通じることがありますね。
たとえば、「DNS」「DNF」「DNQ」は、陸上競技をしている人ならばサイクリストでなくても通じるでしょう。しかし、「漢ギア」「自転車沼」といった用語は理解不能だ。
また、一般的に使っている用語でも、サイクリスト間で使えば意味が変わることもありますよ。なので、意味が分かれば面白い用語は意外に多いです。
本記事では、サイクリストなら覚えて起きたい、よく使う面白い自転車用語(スラング)や知っておくべき用語を紹介します。
サイクリストなら覚えておきたい自転車用語とは
自転車に限った話ではありませんが、どの業界にも専門用語があれば、業界だけに通じるスラング(俗語)もあります。
当然それは自転車業界にも言えますね。ロードバイクを始めた当初は、当然ながらそんな用語は知りません。
たとえば、本日一緒にサイクリングをする先輩が「今日のライドは、DNSするよ」と話しても、頭の中では「DNS・・・何?」となることも。
別に先輩は意地悪でいっている訳ではなく、サイクリストにとってはその手の会話は日常茶飯事ですよ。
始めから全てを覚える必要はありませんが、ロードバイクを通じて1つ1つ覚えていけば、その内玄人になります。
そこで、サイクリスト間でよく使う用語や、知っていおいた方がよい用語を以下にまとめました。
- DNS・DNF・DFQ
- 自転車沼
- 庭
- あと少し・もう少し
- 足が売り切れる
- 漢ギア・乙女ギア
- 剛脚・貧脚・貧脚詐欺
- ゆるポタ詐欺
- 俺、生きてる!
- 生える(はえる)
それぞれについて、説明します。
【「ロードバイクあるある」の紹介】
サイクリストが使う専門用語やスラングがあるように、ロードバイクを始めると、何故か多くの方が同じ経験をする「あるある」がありますね。下記記事では、ロードバイクのあるあるについて紹介します。
【用語①】DNS・DNF・DFQ
「DNS」「DNF」「DSQ」の用語は、ロードレースや陸上競技などで使われる略語です。
今では競技だけでなく、日常のサイクリングでも使われている、ある意味サイクリストにとっては当たり前の用語ですよ。
それぞれの略語の正式な用語と意味は、以下の通り。
- DNS:Do Not Startの略。スタートできない(参加辞退)
- DNF:Do Not Finishの略。ゴールできない(途中棄権)
- DSQ:Diqualifiedの略。(失格)
DSQは、普段使う機会はあまりありませんが、他の2つは結構使うかも。
例を挙げると、「今日〇〇へ走りに行こうと思ったけど、朝起きたら熱があるのでDNSした」「ライド中に、雨が激しくなってきたのでDNFした」のような感じで使います。
略語は、環境や立場が変われば意味が違ったりするよ。たとえば、IT関係の仕事をしている人ならば、DNSときけば真っ先に「Domain Name System(ドメインネームシステム)」を思い浮かべるかも。
【用語②】自転車沼
「気が付いていたら、自転車沼にハマっていた」というフレーズを聞いたサイクリストは多いでしょう。
自転車沼とは、ロードバイク(他の自転車でもよい)を始めてみて、気が付いてみたらロードバイクに夢中になり、それに関する物ばかり買ったりして、完全に趣味にハマった状態を表します。
どんな趣味でもハマれば、なかなか抜け出せないもの。特に自転車沼は底なしに深く、限界が見えません。お金がみるみる溶けていきます。
一言で「自転車沼」とくくっていますが、この沼は状態により様々な派生がありますね。
代表的な沼を以下にまとめました。
- 【所有沼】自転車を次々に何台も所有したくなる、かなりまずい状態かも
- 【軽量化沼】自転車の軽量化のためならば金は惜しまず
- 【アイテム沼】自転車に関するアイテムばかり購入、物欲がとまらない
どれも本当に恐ろしく深い沼なので、一旦のめりこんでしまうと後が大変です。どの沼にも言えることですが、抜け出すキーポイントは、ずばり「経済力」ですよ。
経済力次第では、沼のほとりで踏みとどまる理性が働くのが救いですね。
沼に浸かるのは、まだ歩ける深さまでならば良いですが、頭まですっぽり深く沈み込まないよう理性ある行動を取りましょう。(難しいから沼にハマるのでしょうけど)
【自転車趣味に関する話】
自転車沼にハマリすぎると大変だけど、自転車を趣味にするのは様々なメリットがありますよ。下記記事では、自転車趣味に関する話を紹介します。
【用語③】庭
「庭」とは、本来敷地の中に設けた空間を表す用語ですね。サイクリストの間では「庭」の意味が全く違います。
庭とは、ロードバイクで普段走行している行動範囲を表している。よく使うセリフには、「この辺りは俺の庭だ」があります。(このセリフは、ロードバイクに関係なく使っているかも)
この庭の感覚は、人によって様々なのが厄介なところ。通常「庭」という意味合いから近場をイメージしますが、ロードバイクは行動範囲が広いので、5km、10kmは当たり前ですよ。
この庭のイメージが、次の用語で説明する「あと少し・もう少し」の悲劇につながります。
【用語④】あと少し・もう少し
「あと少し」や「もう少し」という用語は、日常生活で誰もがよく使ってますね。
どちらも同じような意味合いであり、終わりが近づいている中で、使われることが多いです。
しかし、サイクリストの「あと少し・もう少し」は、少し意味合いが違うことが多いかも。
本当に、そのままの意味で使われることもありますが、この用語にはトラップが潜んでいるから気を付けないといけない。
たとえば、よく使われる場面は、初心者のサイクリストが、ベテランのサイクリストの先輩と一緒にサイクリングへ行った際に使われます。
先輩が「あと少しで、ゴールへ着くから頑張れ!」と励ましてくれて、あ~あと少しなんだと思ったら大間違い。
まだまだゴールは、数km先ということが多いです。これは、先ほど紹介した「庭」にも関わる話でもあり、サイクリストの庭と呼べる距離は人によって様々ですね。
つまり、ベテランの方が普段から庭といっている距離が、初心者に当てはまることは、まずありません。
もし、先輩(または同行者)から「あと少し」「もう少し」のフレーズが飛び出してきたら疑うこと覚えておきましょう。
一概にはいえないけど、「あと少し」「もう少し」はゴールまでの距離が5~10km程度のことが多いよ。
【用語⑤】足が売り切れる
自転車で走行している際中に、疲労やエネルギー切れなどで、足に力が入らなくなる状態を表します。
尚、足に力が入らなくても惰性でペダリングはできるので、スピードは遅くとも自転車は前へ進んでいますよ。
ただし、勾配の大きな坂道を上ったり、加速するほどの力は、もはや残されていません。
よく使われるフレーズとして、「ロングライド中に足が売り切れた」「既に俺の足は売り切れている」などがあります。
使える場面は限定されますが、自分の状態を相手に的確に伝えることができる便利な用語ですね。
【用語⑥】漢ギア・乙女ギア
漢(おとこ)ギアは、重いギア比の組み合わせのことを表します。
ギア比が重いため、最高速度は速くなるけど、脚力がなければ、重すぎてペダルが回せない。
そのため、使う人を選びますよ。ただし、ギアが11t-21tのような組み合わせならば、平地だけに限っていえば十分走れます。
また、ギア同士の歯数の差が少なく、より適切なギアチェンジが可能ですよ。
その変わり、長い上り坂の登坂は諦めましょう。
漢ギアは、別の呼び方では「男ギア」や「男気ギア」というよ。
乙女(おとめ)ギアは、軽いギア比の組み合わせのことを表します。
漢ギアと反対に、最高速度は遅くなりますが、ギア比が軽いため、脚力がなくてもペダルが回しやすいのが最大のメリットです。
特に勾配の大きな坂道をスイスイ上れるようになれるのが素晴らしい!(上れる勾配は、脚力に準じます)
一般的には、リア側の歯数に28t以上の構成があれば、乙女ギアと呼ばれていますね。
自転車部品メーカー最大手のシマノでは、近年、新しい商品が登場するたびに、乙女ギアの歯数が多くなっていますね。(34tが普通にある)
また、プロでも30tを使っている時代です。個人的には、乙女ギアが標準となり、あと数年も経てば、乙女ギアという言葉自体が無くなるのではないかと思っています。
【用語⑦】剛脚・貧脚・貧脚詐欺
「剛脚・貧脚・貧脚詐欺」は、三セットで覚えましょう。
剛脚は「豪脚」ともいい、自転車のペダルを漕ぐ力や体力が高いことを表現しています。貧脚は、剛脚の反対を表す用語であり、自転車のペダルを漕ぐ力や体力が低いこと表現していますね。
この用語自体は、サイクリストの脚力を表すために使われることが多いのですが、問題は「剛脚」の脚力を持ちながら「貧脚」と偽る、いわゆる「貧脚詐欺」が結構多いことですよ。
貧脚詐欺を行なうサイクリストは、玄人に多く、謙遜か隠蔽のためなのか、さも貧脚であるかのように振舞っていることが多い。そのため、初心者のサイクリストは高確率で騙されます。
貧脚詐欺を見抜くには、経験を積むことですが、玄人のセリフに「最近ほとんど乗れていない」「本当に貧脚だよ」「昨日飲み会だから今日はキツイな」のような定番フレーズがあるならば、貧脚詐欺を疑ってみましょう。そんな貧脚詐欺を働く剛脚さんと一緒にサイクリングへ出かけると、おいて先に行かれることもしばしばありますよ。
対策は、自分が強くなるしかないので、諦観するしかないですね。
【用語⑧】ゆるポタ詐欺
自転車で散歩のようにゆっくり走り、特に目的地を定めることなく走るスタイルが「ゆるポタ」です。
ゆるポタ詐欺とは、「ゆるポタ」と称して仲間内(または関係者)で集まり、実際はハードな走行だったことを表します。
特に初心者を地獄へ叩き落す行為として、サイクリストの間では広く認知されてるものだ。
よくあるのは「ゆるポタと聞いて参加したのだけど、全然ゆるくない!」「初心者が多いと案内されていたのだけど、初心者のレベルが高くない?」といったもの。
さきほど紹介した「貧脚詐欺」と絡まることも多く、ゆるポタ詐欺に引っかかると、疑心暗鬼に陥りやすくなり、心に深刻なダメージを負うケースもあるとか。
残念ながら、一向にゆるポタ詐欺が収まる気配はなく、多くの初心者がカモになっているのが現状です。
そんな現状に「ゆるポタ詐欺、ゆるすまじ!!!」と声を大にしてあげたい。
【用語⑨】俺、生きてる!
サイクリストの多くは、厳しい勾配の峠や山道を走り終えると、何とも言えない満足感や充実感に浸り、感動することが多いです。
特に苦しむ登坂を、あえて自分の体に鞭を打ち、最期まで上りきれば「生きている実感」を味わえますね。
まだそのような実感を一度も味わったことがなくても、サイクリストとして精進を積んでいけば、やがて味わう日が訪れるでしょう。
目を輝かせ、強く生きている実感を感じる瞬間は、かけがいのないものですよ。
尚、「俺、生きてる!」の元ネタは、人気漫画・アニメの「弱虫ペダル」に登場する、箱根学園のクライマー「真波山岳」がいったセリフからきています。
【用語⑩】生える(はえる)
「生える」の本来の意味は、草木の芽・枝などがわずかに出る状態を表します。
しかし、サイクリストの会話の中では、別の意味で使われることが多いですよ。
たとえば「いつの間にか、庭からホイールが生えてた」「朝起きてみたら、枕元にフレームが生えてた」といったもの。
サイクリストでなければ、何を言っているのか意味不明ですね。(初心者は知らない方が多いかも)
「生える」とは、高価なフレームやホイールなどを買った時に使う定番の言い訳です。
高額の支払いをしたことから、現実逃避するために使われる。
もし、あなたの友人のサイクリストが、日常的にこの「生える」をよく使いだしたら、自転車沼にどっぷりはまっている状態かも。
必要に応じて助けてあげて下さい。
まとめ
本記事で紹介した自転車用語(スラング)を、日常的に使うようになれば、あなたは玄人側へより近づいている証拠です。初めて聞いたサイクリストも一定数はいるのではないかと思いますので、是非覚えておいて下さいね。
今回紹介した自転車用語は、ほんの一部なので、別の機会にまた紹介したいと考えています。